クリスティアネ

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 わたくしがこの国の初姫として誕生したとき、国中を挙げて祝われたという。  国王と王妃である両親は初めての子供にあらゆる幸せをと望み、デルポイへご神託を授かりに赴いた。  アポロンの神殿で、赤ん坊のわたくしに授けられたご託宣は  『この者は、冥界の王ハデスの妃となる運命にある』 というものだった。  神々の寵愛を受ける人間は、珍しくはあるがたまに存在する。  しかし冥府の王ハデスには、嫉妬深いとされる妻ペルセポネがいる。  しかも冥界は…死者の国。  その国は地下にあって、生きている人間は通常、行き来することはできない。  つまり、人間であるわたくしがハデスの妻になるということは…死ぬということ。
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