◆プロローグ

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◆プロローグ

「ねぇ、さとみ」 「何?」 「・・・好きって、何?」 「え?」 「だからぁ・・・好きってどういうことかなぁって・・・」 「綾ってばぁ、また、自分から迷宮に入るようなこと、考えてるの?」 「・・・うーん・・・だって・・・」 「だってじゃないでしょぉ?第一、そういうこと、今聞く?」 「・・・ごめん・・・」 「ついさっきまで私の腕の中で可愛い声をあげてしがみついてきてたのに・・・」 「・・・は・・・はい・・・」 「あんなに「もっとぉ」とかねだってきてたくせに・・・」 「う・・・」 「イッた時なんて、となりに聞こえるんじゃないかと思うくらいの声を上げてたのに?」 「ご・・・ごめんなさい・・・恥ずかしいのでそれくらいにしてください・・・」 「わかればよろしい」 「でもぉ・・・」 「でも?」 「すごぉくすごぉく気になっちゃったんだもん」 「何が?」 「こないだね、多分高校生くらいの女の子に聞かれて答えられなかったのよ」 「なんて聞かれたの?」 「「大人になるってどういうことですか?大人にならないと好きになっちゃいけないんですか?」って」 「そりゃまた、ずいぶん哲学的な問いかけをする娘ねぇ・・・」 「でしょぉ?それからすっかり分からなくなっちゃって・・・」 「ちょっと待って、そのシチュって、まさか、綾、告白されたの?」 「え?あ、うん・・・」 「・・・で、何て、答えた、の?」 「何も答えられなかった・・・そしたら行っちゃった」 「そう・・・それは、悩むわよねぇ・・・まぁ、綾の事だから、そのあとずっと考えてたんだろうし、許してあげるわ」 「ありがとう、さとみ・・・」 「そのかわり、あとでちゃんと答えて、私に教えること!いい?」 「は・・・はい・・・」 「シャワー浴びるけど、一緒に浴びる?それとも後にする?」 「うん・・・ええと・・・」 「はい。一緒に浴びる、ね?」 「・・・はい・・・」 そう言って彼女、滝口さとみは毛布をはねのけて起き上がり、裸の私の手を引いて起こし、寝室のとなりにあるシャワールームに引っ張って行った。 いつもそう。 私が戸惑うとすぐに自分の決めた通りに私をリードする。 嫌じゃないけど、ちょっと違和感がある。 それでもそれが心地よい。 これが好きって事なのかな? そうだとすると、好きって一緒にいないと実感できないことなのかな?
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