第1章 仕立て屋と薬屋

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 このままでは約束の時間に間に合わないかもしれない。どうして今日に限ってこんなにも眠たいのだろう。昨夜も遅くまで起きていたからだろうか。だがいつもならどれだけ夜更かししても……たとえ徹夜でも、裁縫をしている間は心も体もばかみたいに元気だ。なのに今日は泥を被っているみたいに全身が重たいし、頭もはっきりとしない。今すぐにでも眠りたいという欲求と、何が何でも約束を守ろうとする使命感とがの内で相争って、いたずらに消耗しているようだった。  眠気ざましに何か飲もうか。コーヒーだとか、栄養ドリンクだとか、何でも良いからとにかくこの眠気をどうにかしなければ、ドレスを完成させることは困難だ。  ふらふらと階段を下りて、台所の冷蔵庫を開ける。けれども都合良く栄養ドリンクなど置いてはいなかった。コーヒーも、インスタントや缶のものは無いから、豆から挽いて淹れなければならない。まほろはそのやり方を知らない。毎朝のコーヒー担当の父親はとっくに就寝している。両親ともに早寝早起きで、いつもまほろが一番最後に明かりを消す。  仕方がない、時間のロスにはなるけれど、近くのコンビニへ走ることにした。走ればこの強烈な眠気も吹き飛ぶかもしれない。
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