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それから数時間後、いろいろありながらも本日の2人の受講する講義は全て終了した。
錦司といくは大学の講義の帰りに、大学内にあるベンチで話していた。
「ねぇ、天使くん。」
「はい。何でしょうか?」
「・・・その、下の名前で呼んでいい?」
「え・・・。」
いくの言葉に、錦司の心臓は跳ねた。まさか、この美しい彼に名前で呼ぶことの許可を求められる日がくるなんて夢にも思わなかったからだった。
「ええ、構いません。」
錦司は本当は今すぐにでも飛び上がりそうなほど嬉しかったが、その感情は露わにせずに答えた。
「よかった! じゃあ、あま――じゃなくて錦司くんも私のことは下の名前で呼んでもいいわよ。」
「わかりました。では・・・いく先輩。」
目の前の美しい先輩を名前で呼ぶ錦司の声が震えた。
「でも、急にどうしたのですか? 急に下の名前で呼び合うなんて・・・。」
「ふふ。あなたと親睦を深めようと思っただけよ。」
「そう・・・ですか。」
この時も、錦司はいくが自分と親しくしようとしてくれていることに喜びを感じているが、この感情もあからさまにはしない。何故なら、喜びの感情を露わにしすぎるとかっこ悪いと思ったのと、何より自分はそういうキャラじゃないと錦司は自分自身のことを思っているからだった。
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