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錦司はうっすらと目を開いた。気づけば彼はどこかで仰向けになっていた。
”ここはどこだろう?”
何か目に光がくる気がする。その光の正体が知りたくて完全に目を開けてみると、彼の視界の先には白い蛍光灯があった。蛍光灯は白い光を放っている。
「気づきましたか?」
そして、一人の女性の声が聞こえてきた。その声の主だと思われる女性に顔を覗き込まれた。彼女は白いナース帽を頭にかぶり、白いナース服を身に纏っていた。錦司はその女性が看護師だということを理解してから、自分が今いる場所が病院だということを理解した。そして、自分が寝ている場所が病院のベッドだということも。
「・・・ええ、はい。」
錦司は看護師に返事をした。
「あの…僕は一体…。」
「天使様、あなたは一緒にいた女性の方のお話によると、遊園地で突然倒れたそうです。」
“女性って……いく先輩のことだ。”
看護師の話を聞いて錦司はそう確信した。いくは女装男子だが、女性と見間違えるほどの美貌を持つので、きっとこの看護師の女性は勘違いをしているのだろう。
「…そうですか。」
だが、錦司はいくのことは黙っておくことにした。説明するのが面倒だし、何よりこの看護師がいくのことを「変な趣味を持った奴」と思ってしまうかもしれないからだ。
数秒間この病室に静寂が訪れたあと、看護師が優しく微笑んで口を開く。
「一緒にいた方を呼んできますので少々お待ち下さい。」
「はあ……。」
錦司が看護師に腑抜けた返事をすれば、看護師は比較的迅速に歩けばこの病室のドアを開き、ここを後にした。
錦司は上半身だけベッドから起こし、両膝を曲げればそれを両腕で抱えた。
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