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「…そう。そう思っていたのね。」
「え、ああ、はい。」
いくからの、錦司からの告白への答えのない短い返事に、錦司は言った。
そして、数十秒間沈黙が訪れる。その沈黙を破ったのはいくの方だった。
「…わかったわ。その気持ち、受け取る。」
「それは…恋人としてつきあってくださるってことですか?」
錦司はいくからの返事に、瞳を輝かせて言った。
「そうよ。これからは恋人としてよろしくね。」
「あ、はい! よろしくお願いします。」
目の前の愛しい彼と恋仲になることが許された瞬間、錦司は声を震わせながら言った。
こうして、二人は晴れて恋人同士になったのだった。
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あれから三か月後、後期の大学の講義が始まった。
まだ夏の暑さの残る、9月のことだ。
その前、夏休みの終わりに前期の期末試験の結果が返ってきたりした。なんと、どの講義の試験も合格だった。
前期試験の前、いくと一緒に勉強したことで勉強のモチベーションが上がり、結果、良い成績を残せたのだ。講義の内容が違うから勉強内容は違うものの、彼と一緒に勉強する、それだけで頑張れたのだ。
”いく先輩と一緒ならどんなことも乗り越えられそう。そして、二人でずっと生きていける気がする。”
そう、錦司は思ったのだった。
夏の暑さの残るこの大学で、錦司は今日も勉学に励んだ。あとでいくと楽しい時間を過ごすために。
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