序章

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桜沢大学に入学してから2週間が経ち、本格的に大学の講義が始まった。 高校時代まで東京に住んでいた錦司は、単身で東京を旅立ち、桜沢大学に進学したこの春からはこの大学の寮で暮らすことになった。 初めての大学生活はまだ慣れないこともあるが、高校時代のようにいじめを受けることはなくなった。 実は錦司、大学に入学する前の春休みに厳しいダイエットをしてふくよかすぎる体型から標準の日本人男性の体型になることができたのだ。メガネはコンタクトに変えた。 また、高校時代にはいじめだけではなく、廊下を歩いていると「あいつオタクのデブだぜ。」と指さされて笑われたこともあったが、今では錦司のことを「デブ」呼ばわりする者はいない。 地獄だった高校時代とは一変して平和な大学生活を送ることができているのだ。 話を戻すが、今、錦司は次の講義がある講堂に向かっていた。 今は昼休みで昼食が終わったばかりで眠くなってきたため、先ほど眠気覚ましに大学の建物内にある自販機で買った冷たいブラックの缶コーヒーを飲んでから講堂に向かっていたのだ。 ブラックコーヒーを飲んでからは目が覚め、次の講義に気合いが入りそうな気がした。 たくさんの学生たちが歩いている廊下を駆けて、目的地である次の講義が行われる講堂に入ると空いている席に着き、チャック付きの大きなトートバッグから筆記用具と次の講義で使う教科書とルーズリーフ、そしてルーズリーフをまとめるバインダーを取り出す。(この大学はもちろんレジュメが配布される講義もあるが、この講義では教科書が使われる。) 教科書を開き、次の講義の内容を確認する。 もともと中学時代から勉強熱心な錦司は、その頃から授業の予習復習を心がけているのだ。 錦司が教科書を読んでいると、隣の席から人の気配がするのを感じた。
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