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「ここのコーヒー、美味しいわよね。私もたまに行くわ。」
「そうだったんですね。」
ここは、錦司たちの通う大学の近くのカフェ。
2人の座る席のテーブルの上には、飲みかけのカフェオレが入ったカップが二つある。
錦司といくはお揃いのカフェオレを注文したのだ。
平日の午前中であるせいか、カフェの店内はあまり客がおらず、静かだった。
錦司にとってはそれは好都合だった。何故なら、静かにこうしていくと話せるからだ。
ちなみに、カフェオレは錦司のおごりである。
「一つ年下だとはいえ、後輩に奢ってもらうのは何だか罪悪感があるわね。」
いくは、長く美しい髪にさらりと指を通しながら言った。
その仕草に、錦司は胸をときめかせながら答える。
「そんな…お気になさらないで下さい。僕の意思でやってることですから。」
錦司はいくに微笑む。
「そうなの? ありがとう。」
いくも微笑み返した。
錦司は、目の前の女性のような美しい美男の先輩に、またときめくのだった。
“やっぱり僕は、この人が好きなんだ。”
錦司は改めてそう心の中で思った。
そんなことを考えていたら、いくが口を開いた。
「なんか…前から思っていたんだけど…。」
カフェオレを口にしている途中だった錦司は、口に含んでいたカフェオレを飲み込み、いくの方に目をやりながらカップをテーブルに置いた。
いくは真顔でこちらを見つめながら言った。
「天使くんって、可愛い系だよね。なんか見ていて癒されるの。でも、守ってあげたくなるような感じじゃなくて、むしろ頼れる感じだなって…。」
「え…そうですか?」
いくからの突然の発言に、錦司はその発言の内容に疑問を抱いた。
確かに、錦司は身長は168cm…と、日本人男性にしては比較的低い方である。顔立ちもそこら辺の同世代の男性たちに比べて童顔だ。
しかし、彼は自分のことを可愛い系だと思ったことはなかった。だからといって、カッコいい系だと思ったわけでもなく、ただの何の特徴もない男性だと思っていたのだ。自分のことを。
ただ、この目の前の片思いの相手に「可愛い」と言われたことについては悪い気はしていなかったのだった。
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