青井と葵

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自信があったわけじゃない。 それでも、あまりにショックが大きかった。 とても授業どころじゃない。 だけど無情にも、数学の抜き打ちテストが行われて、 私は散々な回答用紙を、ため息と一緒に前の席に送った。 「終わったー!死んだっ!」 隣の席から、大袈裟なリアクションと共に耳障りな大声が聞こえてくる。 ―――青井(あおい) 孝太郎(こうたろう)。 1年の頃から同じクラスで、先月の席替えで不運にも隣の席になってしまったこの男は、 ウチの高校の弱小野球部に所属している。 小柄で細身で、一見するとスポーツとは無縁に思える。 坊主頭が童顔に輪を掛けて、同じ高校2年生とは思えないほど見た目は幼い。 私にとって青井は、 目の上のたんこぶのような存在だ。 いや、たんこぶなら放っておけば治るかもしれない。 だけど、こいつはかなり厄介。 「なぁなぁ日生(ひなせ)!!テストできたぁ?」 ……こうやって、ことあるごとに絡んでくるから。
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