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2 雨の中を
眠れぬ夜を明かした朝。ひどい顔だった。静君の失踪。それに義兄さんが謎の組織の一員で、清美さんの隠した資産を探しているかもしれない、という驚きの事実。色んな事がありすぎて、うまく頭の整理できない。
「おはようございます」
「おはよう、佐藤さん」
「雪乃先輩、昨日警察に呼ばれたのって何だったんですか」
全く食欲の無い朝食のテーブルで、後輩は心配そうな顔をしていた。
「ああ。大丈夫だよ。心配しないで」
「私に出来る事があったら言って下さい」
「……そう。だったらお願いしようかな」
彼を助けるために、昨夜考えていた事を佐藤さんに頼む事にした。
「……よろしく。佐藤さん。武藤先輩」
「おうよ!」
台風による雨の朝。寮の玄関を出て行く二人をそっと見送る私。佐藤さんには私にストーカーがいるかもしれない、と嘘を付き、今日は私の振りをして出掛けてもらった。外では警察が私を見張っているはずだった。
よしよし。男性二名が大学へ行く二人を追っていくのを窓から確認した。私は入学時からずっと気になっていた事を実行しようとしていた。
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