3 源氏の棟梁

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「そうだったんだ。頭が混乱しそうだな。要するに静君は、宝物と引き換えなんだね」  優子さんは長い髪をかき上げた。 「宝のヒントは本に書いてあるけど、警察に没収されているんですよね」  佐藤さんは肘を付きうつむいた。 「でもさ。その本って、静君も原口さんも何度も読んだんでしょう?それでも在り処のヒントは分からないんすよね」  武藤先輩はごろんと寝転んだ。その背を優子さんはベシと叩いた。 「あの。すみません。ちょっといいですか」  佐藤さんが顔を上げた。 「清美さんは隠し場所を、あえて書いていないんですよね?だとしたら、本を読んでも仕方がないんじゃないかな……」 「は?」  そういうと彼女はノートに書き出した。 「『源氏伝説』―『源の書』=『静の書』です。『静の書』は宝の隠し場所。『源の書』は隠し場所じゃないところ……」 「佐藤さん、何がなんだって?」 「雪乃先輩。『源氏伝説』って、本当に全ての伝説が載っているんですか?」 「どういう意味?もっとわかりやすく……」 「あのですね。清美さんは、伝えたい事をわざと書いていない本を人に托して、伝えようとしたんですよね。この考え方だと、元となる『源氏伝説』にも、本来書いてあるべき伝説が漏れて無いかって事です」 「そうか。『源氏伝説』も静清美が書いたんだものね。伝えたい伝説をあえて書いていないかもしれないって事?」  優子さんが興奮して武藤先輩の服を掴んだ。 「でも、それは……」 「分かる訳ないっすよ」 私の意見を武藤先輩がつぶやいた。
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