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「ああ、何て言えばいいかな?義兄さんや静君に本を托したのだから、きっと書いてなくてもこの二人なら、見つけられるだろうって清美さんは考えたんだと思うんです!」
「佐藤さん、それ、静御前の伝説になるのかな」
「その可能性が高いと思います。先輩が部室から盗んだ名簿には、『源智春、平清志(平氏担当)、静清美(静御前担当)とありますから。『源氏伝説』を三人で書いた時も、この担当と思います。だから彼女が情報操作したのなら、静御前伝説ですよ」
平清志。名簿に載っていた名前だ。
「『漏れている伝説に意味がある』か。でも原口さんも静君もそれが分からない……」
「そうなんです、優子さん。私は源氏の伝説は自信がありますが、静御前は静君と知り合ってから調べているので全く知らないんですよ。それに静君だって清美さんの本を元に勉強しているから。載っていないものは彼も知らないはず……」
……待て?待て、待て。自分でいいながらどうも引っかかる。何か忘れているような。
「ちょっと?原口さん?」
「……何でもないです」
「アンタがそんな調子でどうすんのよ!」
誰かがいきなり私の背をビターンと叩いた。
「痛?え?アキ子さん……」
いつの間に部屋に入ってきたの?
「落ち込んでも前に進まないのよ。まずはやれる事をやらないと。あの僕ちゃんを助けたかったら、最後まであきらめない事さ」
彼女が振りまわす棍棒を、優子さんはさっと取り上げた。
「そうよ。原口さん、私達がいるじゃない」
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