319人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうですか。警察は、静君を乗せた車の行方を追跡しているのでしょうね。恐らく今回の誘拐は、宗教団体『レッド』の仕業です」
「宗教っ?」
佐藤さんはテーブルにペットボトルのお茶を置き、私に注いでくれた。
「情報が操作されてどこにも載っていませんが、静清美、源智春、そして平清志。この三名は大学在学中に、自己啓発セミナー目的のサークルを作りました。これが後のレッドに発展していきました。教祖は平です」
そういうと、彼女は古い雑誌を棚から取り出した。
「この特集は超能力についてというもので、当時の平の写真がありますよ。ほらここ」
部室の写真とは違いスキンヘッドになっていた。作務衣姿の笑顔は爽やかだ。
「レッドは危険な思想です。源は早い段階で脱退していますが、静清美はレッドが違法薬物使用の疑いで集団逮捕される寸前に、教団の資産を持ち出して逃亡したんです」
「佐藤さん。詳しいのね」
雑誌から目線をずらすと彼女は頬を染めた。
「私は公安庁志望なのでカルト集団は勉強していたものですから。それに雪乃先輩は一ノ谷大学だから、何かあったら嫌だなと思って」
本当に私を守っていたんだな、と感動。
「……それで?義兄さんは脱退しているんだよね」
「そうみたいです。数か月しか在籍してないみたいですよ」
「どういう宗教なの」
私は持参したトマトジュースを一口飲んだ。
「平が掲げるレッドとは、いわゆる血の事です。身に起こる不幸な出来事は、先祖から伝わる因縁のせいなので、自分のせいでは無いという教えだそうです」
ジュースを飲むのを止めた……。
「そんな事を言っても。信者達は何をするの」
最初のコメントを投稿しよう!