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『お前は俺の声も忘れたのか』
高圧的な呆れた声。なぜか心底ほっとした。
「そんな事はどうでもいいでしょ?今、どこにいるの?」
『ああ。捕まったけど、逃げて来た。今は公衆電話から掛けている』
すると佐藤さんが私の肩を叩いた。
「先輩。まず、警察に連絡するように言わないと」
「!そうだよね。静君、一旦切るから110番して」
『そんなの。先にしたに決まっているだろう?愚か者め。俺を誰だと思っている。それよりも雪乃。例の宝の在り処って分かったか』
警察に連絡をしたと聞き、腰が抜けた。
「良かった……。怪我は無いの?」
『無いって。だから、在り処はわかったのか?』
「まだだけど、ヒントが何となく……」
すると、佐藤さんが私の腕を揺さぶった。
「先輩!電話をしているより、早く人がいる所に逃げた方がいいです」
「わかった。静君、あのね」
『ああ、何だ?僕の知っている処か』
……ん?なんか違和感がある。何だろう、何だろう……。
「……」
『どうした、雪乃?』
「いや。大丈夫だよ」
『そうか。大丈夫か。いいからもったいぶらずに教えろよ』
……やっぱりおかしい。いつも私が大丈夫っていうと逆に心配するくせに。
「ねえ静君。まず、そこはどこなの?」
『あ……?おい。止めろ!雪乃、宝を捜してくれ!頼む、僕達を助けて』
「待って?静君ちょっと!」
ツーツーと電話が切れた。
「静君は警察と合流したんですか、先輩」
「何か変なのよ……あれ?また、電話だ、もしもし?」
今度は片岡刑事だった。私は今、静君から電話をもらった話しをした。
「おかしいな。そんな情報は入ってないよ」
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