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「確かに、ろうそくに火を付けるのは困難でしょう。ですが、真夏のハウスの地面にも、このように藁が敷いてありました。おばあさんがろうそくに付けようとした火打ち石の火花は、藁に燃え移ります。すぐには燃焼しませんが、時間をかけてゆっくりと炎になるはずです」  床の藁からは、やがて白い煙が上ってきた。だんだんとそこは、煙草の火のように紅くなった。 「……本当!」 「まさか。そんなことって……」  口に手を当てているお嫁さんは、立ちすくんでいた。静君は赤い炎を足で踏んで、消した。  やがて、大川さんの御主人がやってきた。私達は、放火の事は口にせず、代車のお礼を言い、この場を後にした。車を修理工場に返すと、お金を半分返してくれた。これは快く受け取ろう。  帰りは電車だ。駅で電車が来るのを待っていた私達。日差しが強く、吹く風がぬるい。 「静君。どうして御主人に、火打ち石の事を言わなかったの」  誰もいない駅のホーム。イスに座る私達。 「あの感じだと、外部の人間に母親の件で、とやかくいわれるのは嫌だろう。まあ、あのお嫁さんには伝えたから問題ないさ。それにあの火打ち石を片付ければいい話だ」 「しかし。よく、あの石のこと分かったね」 「最初におばあさんに出会った時、うずくまっていただろう?あの時、おばあさんの言った言葉、憶えているか」 「確か。『車が動かない』って」 「違う。『あれが動かんのよ』っていったんだ。車の事じゃない、照明の事だ ったんだ」 「車じゃなかったの?」
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