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その日、暗くなってきて雨戸を閉めるので、母はチビを呼んで家に入れようとした。
だが、チビは、離れたところでこちらを見ているだけで、家に入ろうとしなかったという。
庭で夜通し遊びたいのかね?と、母はそのまま放っておいて雨戸を閉めた。
翌朝、姿を現さないチビを、さすがに心配になって庭を探すと、ツツジの木のそばで死んでいるのが見つかった。
首に一噛みされた跡があった。
このあたりを縄張りにしている、半野良の猫のしわざだろうということになった。
痩せた、目つきの鋭い、凄みのある白と黒の猫だ。
捕食のためでもなく、単に野生の本能で襲うのかと驚いた。
今では家には、中型犬のマロンがいる。
マロンが家に来たとき、私は初めてチビの死に涙を流すことができて、心の傷を癒された。
マロンはとても可愛くて愛嬌のある子だ。
同時に、恐怖を覚えると攻撃に転じる、強い生き物でもある。
庭ではノシノシと歩き、ガサガサと植木をかきわけて走り、遊ぶ。
優しいうさぎが恋しくなることもある。
うさぎは草をはんで庭にとけ込んで遊ぶ。
伸び伸びと庭で遊ぶうさぎを、危険だからと家に閉じこめることはできない。
私はもう、うさぎを飼うことはないと思う。
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