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○第二話
【生物室にて、中央のテーブルに固まって座っている優、彩未、菜子、雪。美羽はその後ろの、隅の席に着席している】
菜子
「ねぇ雪ちゃん。昨日のドラマの話なんだけど……ラスト、すごかったよね」
雪
「そうそう。あのラスト、意外な奴が犯人で驚いたよなぁ」
菜子
「う、うん……!全然疑ってなかったもん。予想してなくてビックリしちゃった」
雪
「人は見かけによらないってなぁ。人間、何があるかわからないよなぁ……」
優
「…………。」
《真剣に》
雪
「───で、優は寝てる彩未の頭の上で一体なにやってるんだ……?」
《若干呆れたように》
彩未
「ぐー……ぐー……」
《寝息》
優
「今とても大事な場面だから」
《真剣に》
菜子
「大事……?消しゴムを彩未ちゃんの頭の上に乗せて……えっと……?」
優
「今、消しゴムタワーを建設しているから」
《楽しそうに》
雪
「……あ、あはは…。また変なことやり出したな……後で彩未に怒られるぞ~?」
優
「ふふ」
【その様子を遠くから眺めている美羽】
美羽(M)
「"沢城 優"……。不思議な人だな……」
~回想~
優
「これ、落としたよ。筆箱」
美羽
「───あ、ありが……とう……」
優
「……?」
《じぃっと美羽の顔を見つめる》
美羽
「……あ、あの……?」
優
「………初めまし、て?」
美羽
「えっ……あ……」
優
「……じゃない?あなた、名前は?」
美羽
「…あ……栗原……。栗原、美羽……です」
優
「……栗原、美羽……?初めて聞いた名前。あなた、ずっとクラスにいたの?知らなかったよ。どうして知らなかったんだろう」
美羽
「……私、存在感ないから……」
優
「そう。」
優
「でも、今知れた。あなたがここにいるって」
《にこりと微笑む》
美羽
「えっ……」
彩未
「ちょっと沢城ー!早く早くー!」
《遠くから》
優
「行かなきゃ」
美羽
「あっ」
【優は彩未たちの元へ駆け出す】
美羽
「…………。」
《呆然》
美羽
「……ふふ…」
《嬉しそうに》
ー栗原家ー
【学校が終わり、帰宅した美羽。すると玄関に向かって慌ただしい足音が近付いてくる】
柚花
「おかえり!隆生───」
《明るく》
美羽
「…………。」
《気まずそうに》
柚花
「何よ、あんたね。紛らわしいことしないでちょうだい」
《急に冷たく》
【美羽の後ろでドアの開く音がして、隆生が入ってくる】
隆生
「ただいまー」
柚花
「隆生!おかえりなさい!」
《ぱぁっと明るく》
【隆生に近付いた柚花はわざとらしく美羽を下駄箱の方に突き飛ばす】
美羽
「っ……!」
柚花
「隆生、お待ちかねのアレが届いたわよ」
隆生
「えっ、まじで!?」
柚花
「ええ、ほら。早くいらっしゃい」
隆生
「うん!」
【そのまま二人はリビングへと消えていく】
美羽
「…………。」
《少しだけ顔を歪ませる》
【黙って自分の部屋へと向かう美羽】
ー美羽の部屋ー
【机に向かい、手紙を書いている美羽】
美羽(M)
「お父さん、お母さん。お元気ですか?そっちでは、どんな風に過ごしているんでしょう。天国でも、やっぱり二人は仲が良いのかな」
美羽(M)
「私はもちろん元気です。おばさんも隆生くんも、とっても……良くしてくれて、学校でも新しく友達が───」
美羽(M)
「そう……沢城、優って言うの。初めて、ちゃんと話をして……」
美羽(M)
「私のことを、見てくれた」
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