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だがそれも叶わず、時すでに遅し。哀れ16歳ばかりの若きのっぺらぼうは、メデューサの恋の悩みを聞いたばかりに石像と化してしまうのか。
「ちょっと照れくさいんだけど……、聞いてくれるかな?」
ヒビが入るような音が段々と耳元に近づき、視界の端が黒く染まる。
穏やかで物静かな石髪さんはもはやおらず、多くの人々を恐怖のどん底に陥れた神話の魔獣、メデューサが禍々しい邪気を放って僕の眼前に立っている。
次の言葉を紡ぐまでの、きっとこの瞬間、彼女の中では永遠にも感じた時間であっただろう。主に僕の全身が石化するまでの数十秒ほど。
「好きです。付き合ってください」
まぶた裏の緞帳が降りきったタイミングと、石髪さんが最後に準備したであろうセリフが重なり、黒く塗りつぶされた視界の中で僕の意識は途切れた。
ここからはスタッフロール。
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