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「でもほら、野平君はのっぺらぼうだから。たぶん私の目を見ても石化しないと思うの」
「そういうものなのか」
「というよりも……、この石化現象は本来なら私自身が制御できないといけないんだけど」
石髪さんの青白い肌はブルーベリーセーキに似ていると思った。
少し髪が揺れた。背中まで伸ばした後ろ髪は緩やかなウェーブがかかっているが、これはクセっ毛というわけではなく個々のヘビが小さく蠢いているせいである。
「私、人と目を合わせるとどうしても緊張しちゃって。それで取り乱しちゃうと、思わず石化の呪いが発動しちゃうの。だからそうならないように克服したいなって思って」
「いやちょっと待って。それじゃあやっぱり僕も石になる可能性はあるのか。見る側の目の有無は関係ないんだよな」
「野平君なら、顔を意識しないから大丈夫だと思う。きっと」
「石髪さんのさじ加減じゃないか」
「やっぱ……だめ、かな?」
声に残念そうな色が混じった。少し思案するが、石髪さんは、好きな人がいるという告白を僕に勇気をもって打ち明けてくれたのだから、容易く断ることも憚られる。そういうところが人間臭いんだよと、昔、親父に言われた。
「仮に石化しちゃったら……治せるものなの?」
「保健室にはそれ専用の隔離部屋があるけど。たぶん有効な薬品も揃ってる。それと、呪いの初期段階ならすぐに目線を逸らせば解除されるわ。もちろん私もダメだと思ったらすぐに目を閉じるよ」
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