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彼女の呪いにかけられた人たちがどういう末路を辿ったのか。その行く先を耳に入れたことはなかったが、実害をなすレベルの強力な呪いであればこの学校への入学許可はそもそも降りない。
石髪さん自体は人間に敵対的な態度をとっているわけではなく、叶う話なら人間の女子高生として生活してみたいとさえ語っていることは知っている。
本人の口からも安全が保障されるなら、大方の状況は想定内だということにもなる。
僕は腕を組んで一呼吸置いた後、観念したように息を吐いた。
「わかった。付き合う」
「ありがとう」石髪さんが席を立つ。
「で、どうすればいいんだ。僕が石髪さんの意中の人間だとして、目を見ながら話を聞くだけでいいのかい?」
「私が野平君の下駄箱に手紙を入れたという体で、放課後に待ち合わせた教室に入ってくるところからでいいかな」
「え、本格的すぎない!?」
「こういうのは雰囲気が大事だし……。本当にドキドキした時に何も言えなかったら本末転倒だもの」
そう言うと石髪さんはスカートのポケットから折りたたまれた便せんを取り出し、僕の手に握らせた。心なしか力が込められていた。
合点はいかないが理にはかなっている。僕は廊下に誰もいないことを改めて確認してから扉をしめると、時間を巻き戻した体で教室の前に立った。
面接の練習みたいだなと内心で少し笑った。
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