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弐拾参話
○何時傘真無名
僕は全てを元通りにした。
砂を壊すために作った三つの舞台装置も、跡形もなく始末して、過去を上手い具合に調整して、戻ってきた。
蒸し暑さを感じて、久々に夏に戻ってきたのだと実感する。
砂は、僕の足元で胡座をかいて座っていた。
「......砂」
僕の"作戦"は成功だろうか。
灼熱の中で僕が足りない知恵を絞って出した答えがこれだ。
真衣と朦罵。二人の意思を尊重し、なるべく
過去を変えず、砂の淀んだ思考を破壊すること。
自分でもまだ迷っている。
砂が言ったように、二人で力を合わせれば真衣とまた生活を送ることが出来るのかもしれない。
______だが、僕は決して、もう能力を使わない。
彼女は、死んだのかも分からないけど、僕の前から消えたのは事実なのだ。
僕に何も伝えずに。ただ消えたのだ。
「......"教えなーい"。か......」
僕は青空を仰いで呟いた。
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