第1章 1話 邂逅

1/3
1045人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ

第1章 1話 邂逅

 思い出したと言っても、今日は入学式。転校生がやって来るのは五月だから、まだ一ヶ月ある。アドバイス役である僕が高校からの入学っていいのかなと思ったんだけど、小学生のころは前世の記憶が戻ったことで結構情緒不安定だったんだよね。一応入学案内は来ていたらしいんだけど。  何千人かに一人と言うギフト持ちは、もちろんレアなんだけど、そのギフト持ちが通う学校がこのゲームの舞台になる桜凛館学園だ。別名魔法学園。五歳になるとみんな、ギフト持ちかどうか診断され、その可能性がある子供は、皆この学園に入学する事になる。もっともゲーム内ではギフトという名前は出て来ない。特別な力とだけされている。ゲームにはほぼ関係ない設定だったしね。  また、数が少ないとはいえ、女性でギフトを発現した人はいないため、結果的にここは男子校だ。  もちろん歳をとってから発現する人もいるから、外部募集もされていて、僕はそれで入学した。とっくに発現していたのに、肝心の入学がこの歳になったのは、情緒不安定もあるけど、ブラコン兄たちのせいだ。ともあれ、それは今は関係ない。  さて、確か彼は僕と同じ部屋になるはず。その前に何とかここに馴染まないと。  僕の入学した学校は、俗に言う王道学園というやつだ。  王道学園って、知ってる?  グルグルメガネともじゃもじゃカツラを着けた、実は美少年の主人公が、エスカレーター式の全寮制の高等部に転校して来て、バスケ部の爽やかスポーツマンくんや一匹狼の不良くん、ホスト教師、生徒会や風紀委員を始めとしたイケメンたちと恋に落ちるというBLストーリーだ。  ちなみに主人公の同室者にしてサポートキャラたる僕の役職は、主人公の起こす騒動に巻き込まれる平凡キャラ。こうなれば巻き添え傍観者位置バッチこいだねっ。  BLゲームの主人公のすぐそばのポジション。ひょっとしたらイベントもライブで拝聴出来るんだろうか。少しドキドキする。このゲームが大好きだった僕は、本編のコンプリートはもちろん、追加ディスクも全て網羅している。確か追加ディスクでは攻略キャラの追加の他、攻略出来なかったキャラが出来るようになったり、主人公が……。  そんなことに気を取られていたからだろうか。僕は不意になにかにぶつかると、その場に尻もちをついた。  どうやら誰かと衝突したようだ。目を上げると、尻もちをついている相手が見えた。 「ご、ごめんなさい!」  ギフトは必ず二つペアになって授かる。良いギフトと悪いギフト。良いギフトが強力なほどバランスを取るように悪いギフトも強力になる。  僕のステータスが見えるギフトと対になるのは《隠形》というキーワード。これは能力というわけではなく、僕という存在自体が希薄になるギフトだ。いわゆる、影が薄いというやつ。お陰でよく無視されたり、気づかれず人とぶつかったりする。  傍観者たるサポートキャラには相応しいギフトかもしれないけど、面倒なことの方が多い。祝福のギフトと呪いのギフトとは良く言ったものだ。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!