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旅立ちの日
「あなたはもう私の妹じゃないから」
その言葉を聞いて、私はゴクリと唾を飲み込む。
視線の先には、玄関の扉を開けて立っているシズの後ろ姿。その右手には、忍者にとって大切な巻物や道具が入ったトランクケース。
「さよなら」
そう言って私よりも一足早く、シズは住み慣れたこの3LDKの一軒家を出て行った。
「あらあらせっかちなお姉ちゃんねえ」と後ろでは母と父が穏やかに笑っている。
「じゃあ、お母さんお父さん! 私も行ってくるね!」
私は気を取り直して、徹夜で準備した荷物が入ったている大きなリュックサックを背中に背負う。そして、右手には魔女の証であるほうきを握りしめた。
「忘れ物はないかい?」という優しい父の声に、「うん!」と元気よく返事を返す。
「お姉ちゃんは立派な忍者、あなたは立派な魔女になって帰ってくるのよ」
そう言って手を振ってくれる両親の姿を目に焼き付けて、私は晴天の空の下、自分の人生にとって大きな一歩を踏み出した。
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