それはまるで水のような

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今年は、演奏が終わり、控室に戻った時の先生の顔で、なんとなく分かってしまった。ああ、無理だな、と。 終わってしまった、根拠もなくそう思った。悪い予感は当たるもので、丸2年ぶりに、『どこにでもある、その他の一校』という烙印を容赦なく叩き付けられた。 どこか現実味の薄い諦念に身を包まれながらホールを出、代表校の歓声を聞きながらミーティングをした。 周りの部員の涙を目にしても目尻は冷え切ったままだったのに、指揮を振ってくださった先生の『やっぱり悔しい、それは先生も同じです』という言葉を聴いた途端、ぶわっと、何かがあふれた。 後輩に、自分と同じ思いをさせてしまった。私達の力不足で、県大会の舞台に、もう一度ステージに立たせてやることが出来なかった。 それはやっぱり悔しいことなんだと、取り返しの付かないことなんだと、どうしようもなくあふれてくる嗚咽を噛み殺しながら思った。 三年間、努力の結果を発表してきた場で、その度に悔しがって、泣いて、それでもやっぱり嫌いになんてなれなかった。 中学生としてのコンクールが全て終わって、後は定期演奏会を残すだけとなった今でも、あのステージを夢に見る。 もう一度、あの舞台に。私にとって、あの舞台は戦争の場であり、成果を発表する場であり、冷たい緊張に満ちた、それでも優しい場所だ。 だから、私はコンクールが好きだ。
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