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あ、と思った
思わず目をつぶって
彼と唇を合わせる。
電車から降りて改札をくぐる人の波の中、
そこだけ、2人だけの時間は止まった
初めて唇を合わせるのに
震えなどない、
お互いがお互いを求めるように、
啄むようなキス。
一定の間隔でつけては、離し、重ねる。
彼はこれを望んでいたと本能的に、
彼女は毎日見つめていただけの彼と唇を合わせていることを不思議がることなく直感的に、
2人の時間は止まる
相手の形を確かめるようなキスが止んで、
相手を確かめるようなゆっくりとしたキス。
蕩けるように、彼女の脳が麻痺していく。
薄ら目を開けながら彼の顔を見ると、
物欲しそうな彼の目が彼女を見ていた。
お互いの呼吸が揃い少しして、
静かに唇を離す。
彼女が1つ息を吐き出し、
彼は艶を含んだ目を見せた。
素敵なラインだ、と彼の輪郭を彼女が見つめていると、
愁いと残り惜しさの表情を見せて
彼はいつも通りに歩いていった。
時間が動き出す。
これは日常的な朝の、幻、
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