第4章 複雑な想い

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そしてベイブリッジを出て、目的に向かった。 首都高速から横浜横須賀道路に乗り終点まで行くと、海が見えてくる。 高速を出た信号で待っている時に 「パパ!海だね。この近くなの?」 と聞くと、父が右手で真横を指し 「ほらアソコだよ」 と指を向けた先に湯楽の文字が見えた。 「本当に近くだね」 そして信号が変わり湯楽の駐車場に着いた。 小野さんの家の車も着いて湯楽に入った。 日曜日の昼前とあって結構人がいる。 父が 「取り敢えず1回風呂に入って、食事にしよう」 と号令の様に言った。 女性は4人、男性は2人それぞれがお風呂に入る。 さすがに初対面で、いきなり裸を見せ合うのは少し恥ずかしい。 コソコソと脱いで浴場に入る。まずは、体を洗い始めると、横に彩香ちゃんが座って洗い始める。 「結城さんってスタイルいいね。何かスポーツやってるの?」 「ううん。スポーツは苦手なんだ。部活も文科系の吹奏楽をやってるの あっそれと莉乃でいいよ、苗字で呼ばれると、何かくすぐったい感じ」 「うん、分かった。じゃあ私も彩香って呼んで」 「うん」 そして二人で内風呂に入る。 「莉乃ちゃんはパート何?私も吹奏楽でフルート吹いているんだ。」 「私もフルートよ。一緒だね」 と返す。 話しやすい子だな。 更に彩香ちゃんが 「ねえ露天風呂に行く?」 やけに積極的な子だな? 勝利は、こういうタイプが好きなんだ とつい考えてしまう。 露天風呂に行くと、10月の少し肌寒い空気と太陽による温かさと海がコラボして、気持ちがいい。 思わず 「はあ~」と息を吐く。 すると横でも 「はあ~」と同じく彩香が息を吐いた。 二人は目が合い笑った。 「莉乃は何処に住んでるの?」 「御茶ノ水だよ」 「学校は?」 「池女の中等部だよ」 「え~じゃあ来年は同じ学校かも知れない。私、池女の高等部を受験するんだ。」 「そうなんだ。じゃあ一緒になるかも知れないね。 よろしくね」 と笑顔で話すが、どうしても彩香が私に話すように距離を近づけれず、一歩距離を置いてしまう。 話はいきなり勝利の話に変わる。 「キャンプで勝利と仲良くなった子って、莉乃ちゃんなの?」 「なんで?」 「勝利のお父さんが社長に電話しようと言っていたから、確かキャンプも会社で行ったと言っていたような記憶があって」 「そうか、確かに勝利とキャンプで仲良くなったのは私よ」 「そうだったんだ、莉乃ちゃんなら納得。綺麗だし優しそうだもんね」 さすがにその言葉に対して、返す言葉が見つからない。 その時、圭子さんが 「そろそろ出るわよ」 と声を掛けてきたので、湯舟から出ようとした。 その時、後ろから声が聞こえた 「勝利と付き合うの?」 と聞いてきたので、後ろを振り返り 「ううん。それは無いわ」 と答えて浴室を出て、脱衣所に行った。 そして女子4人は待ち合わせ場所の食堂前に向かった。 4人で食事が終わり、圭子さんと彩香ちゃんの母はエステに向かった。 私と彩香ちゃんは、海が見渡せるリクライニングチェアーに座ってのんびりと海を眺めていた。 「さっきはごめんね。気を悪くしちゃった?」 「えっ何が?勝利の事なら平気だよ。本当に付き合わないから」 「何で?嫌いなの?」 グイグイと私の中に入ってくる。 「嫌いでは無いんだけど、男と付き合う気が無いだけなんだ」 と、この話を終わらせようと興味が無い素振りを見せた。 すると意外な言葉が返ってくる。 「実は私も男に興味が持てないの。 これって異常なのかなって思ってたけど、同じ気持ちの人がいて良かった。」 と笑顔で言ってくる。 やばい、墓穴を掘った! 慌てて取り繕うとする 「いや、そういう意味では無いのよ」 「そういう意味?」 私は顔を赤くして、小さい声で 「私はノーマルだから。友達として、同性は好きだけど、愛する事は無いわよ」 すると笑いながら 「私だってノーマルよ。ただ同年代の男性に興味が無いだけよ。」 何だそういう事か。 勝利が好きだった人が、実は同性愛者だったなんてオチではなくホッとした。 すると彩香ちゃんが 「そろそろ、もう一度お風呂に行こうか?」 「うん」 と頷いた。 お風呂場に向かっていると、20代のカップルがイチャついていて、キーケースを私の足下に落とした。 私はすぐにキーケースを拾う。 男性が 「ありがとう」 と私が持っているキーケースに手を伸ばしてきた。 私は、その手を見て震えてしまう。 その震えた手にある、キーケースを男性は取り 「ありがとうね」 と何の気もなく、お礼を言ってきた。 私は声も震え 「いいえ」 と言うのが精一杯だった。 更に足も震えて、その場にしゃがみ込んでしまった。 その一部始終を見ていた彩香ちゃんが 「莉乃ちゃん、それって男性恐怖症?」
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