第4章 複雑な想い

4/4
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
私の男性恐怖症は、知らない男子との間で発症する。 大体はその段階で終わり、恋愛まで発展する事など無かった。 ただ、これまでは男性に対する恋という病気に罹った事が無かったので、男性を避ければ良いと思うぐらいだった。 しかし、キャンプで恋の病に罹った私は、この病気を心から憎んだ。 まさかこんな日が来るとは、思いも知れずに、この病気と向き合う事をしなかったのである。 治したい その思いが強くなって来ている。 今回の温泉で男性のキーケースを拾ったのも、今まで避けていた男性への距離も少しずつ近づけて行こうと思った矢先の出来事だった。 今日は彩香ちゃんが居てくれたから、良かったものの、もし一人だったらと思うと、少しでも免疫をつけようとする行動も難しいと半分諦めてしまう。 彩香ちゃんとお風呂に入り、背中を流してくれていた時に、そんな私の事を哀れんで欲しくなくて、彩香ちゃんに伝えると、彩香ちゃんも理解してくれた様であった。 そして温泉から上がると二人は、荷物入れから携帯を持って、のぼせた身体を冷ますためリラックスルームに行った。 そこで勝利に返信を送るため入力してあった文章を読み返す (勝利、もう連絡しないで下さい。私はもう貴方と話したくありません。) どうしようか 画面を見て固まっている私に彩香ちゃんが声を掛けてきた。 「どうしたの?携帯の画面を見て、そんな真剣な顔をして?」 「ううん。何でも無いよ」 「もしかして勝利?」 一瞬どう返事しようか迷う 「図星ね。デートの誘い?」 「ううん。奈緒ちゃんから聞いてない?」 「うん。何にも」 「そうなんだ。実はね・・・」 と渋谷での出来事と昨日の学校で奈緒ちゃんと話した事も伝えた。 「そんな事があったんだ!奈緒は自分の事を話さない子だから それで、勝利からは何て連絡が来たの?」 「うん。弁解をしたいって内容だったんだけど、もう奈緒ちゃんから聞いているから、別に聞かなくていいの」 「でもさっき、何か悩んでいたわよね」 「うん。返信を打ったんだけど・・・」 すると彩香ちゃんが、 「もしかして、もう会わないとか送ろうとしてる?」 えっ 「また図星だった? 諦めてはダメだよ。 病気に負けたらダメだよ。 さっき、病気を哀れまないでって莉乃ちゃんが言ったんだよね。 それって病気なんかに負けないって意味では無いの?」 言葉が出ない 「諦めないで。まだ莉乃ちゃん、何にもしてないでしょ! やれるところからやって行こうよ。 それが嫌だと言う男だったら、莉乃ちゃんを幸せに出来ない男なんだよ。 でも勝利は、そんな男では無いと思うわよ」 涙が流れ出した。 「私だって諦めたく無い。 私だって、勝利が好きだから、大好きだから!」 彩香ちゃんも涙を浮かべて、私を抱きしめながら、 「一緒に考えよう 絶対に何かいい方法があるから、一緒に考えよう」 二人は抱き合いながら泣いた。 さっきも風呂場で泣いたところを不思議そうに見ていたおばさんが、また不思議そうに私達を見ている。 その不思議そうに見ているおばさんの顔を見て、思わず笑ってしまった。 「私達、泣いてばかりだね。今日で泣くのを止めようね。」 彩香ちゃんの言葉は、私を勇気づけてくれた。 よし! 私は送ろうとしていた文章を削除した。 「ねえ莉乃ちゃん。話すのも会うのも出来なくても、LINEは平気なの?」 確かにLINEで手が震えたり、気持ちが悪くなった事は無かった。 「うん。LINEは平気かも」 「じゃあ、しばらくはLINEでつきあっていけば? それで、会えそうだったら会うってのは、どうかしら?」 「でもそれって勝利にも迷惑だよね? もしかしたら一生会えないかも知れないし」 「でも、聞くだけ聞いてみれば? そして本当にダメだったら、また考えようよ。 今度は同じ高校なんだから。」 「うん。じゃあそうしてみる」 私は勝利にLINEを送った (ごめんね。私、男性恐怖症が酷くなってしまって、しばらく勝利と会えないし、電話も出来ません。 ただLINEで良かったら、今まで通り仲良くしていきたいです。) するとすぐにLINEが届く 「治らなくても、ずっと待ってるから。 僕には莉乃しかいないのだから) 勝利のLINEを見て、また涙が押し寄せて来た。 横の彩香ちゃんに抱きつき 「ごめんね。もう一回、胸を貸して」 と言って泣き続けた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!