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心城学園を後にしようとグラウンドから校門に向かっていると、吹奏楽の演奏が聞こえて来た。
近藤「おっ吹奏楽かあ。
俺の彼女も吹奏楽やってるんだよ」
!
皆んなが一斉に食いつく。
耕太「お前が彼女?
嘘だろ?」
祐輔「動物愛好家か?」
近藤「ふざけるな!俺の彼女に何て事を言うんだ。」
耕太「いつから付き合ってるんだよ?」
近藤「実は昨日、いきなり付き合って下さいって、言って来たんだよ。
ほら証拠写真」
と皆んなに写メを見せつけた。
祐輔「あっ」
僕も覗き込みと、近藤の写メに写っていたのは、莉乃の友達の美希ちゃんだった。
そうか、だから珍しく祐輔が女の写真に反応したんだ。
耕太「あれ?この子って確か、」
祐輔が耕太の口を塞ぐ
近藤「何だお前達、妬いてるのか?
今度紹介してやるよ」
全員で
「いや、いいよ」
耕太「そういえば、ここの吹奏楽って強いらしいんだよ。確か奈緒もここから吹奏楽で推薦来てたけど、断ったらしいぞ」
「へえ〜そうなんだ。知らなかった」
祐輔「また、この二人のバカに付き合うのが面倒くさかったんだろう」
「そういう祐輔は、誰が好きなんだよ?」
少し照れ臭そうに
「女?まあ敢えて言えば彩香かな」
少し落ち着きがなさそうに、そわそわしている。祐輔のこんな表情を始めてみた。
耕太「じゃあ、付き合っちゃえよ。」
祐輔「俺もこれでも考えがあるんだよ。
中学校の卒業式に告白する。」
「今でも付き合えると思うよ?」
「これでも、この5人の関係は好きなんだよ。
だからバラバラになる最後の日にしたんだ。
もうこれ以上、言わせるな!」
何だ。普段滅多に口にしない5人の関係を、祐輔がそんな風に思っていたとは意外だったが、何だか嬉しかった。」
すると耕太が
「よし!俺も卒業式。奈緒に告白するぞ!」
僕は告白は無理だろうけど、せめて喋れる様になってたらいいなあと思っていた。
そして甲子園への不安だけが積もった日曜日は終わった。
今日も莉乃にLINEを送る
(今日は心城学園の試合を観に行きました。
結果は大敗、前途多難です。
それと近藤が美希ちゃんと付き合ったって言ってたよ)
すると10分後に返信が届く
(美希は高校野球オタクだから、高校で活躍しそうな人に交際を申し込んでいるみたい。困ったものです。最後に言った人が付き合ってくれたと喜んでました。)
これは恋愛と言うのだろうか?
そして最後に
(おやすみ)
すぐに
(おやすみ)
これが僕と莉乃の日常だ。
ちょっと物足りないけど、この頃は写メも送ってくれるので、少し近づいた気分になる。
早く会える日がくるといいなあ
翌日からの放課後は、3人でトレーニングに励んだ。
完全に硬球に慣れる為に、部活には顔を出さずにひたすら走り込んだり、ピッチング練習を繰り返す。
ただ耕太はたまに部活に行き、フリー打撃の練習だけ参加しに行く日もあった。
そして10月31日、世の中はハロウィンで盛り上がっているが、僕達はいつもの様にトレーニングを終えて帰っていた。
耕太「ところでハロウィンって、収穫祭だろ?何で日本でも盛り上がっているんだ?」
「う〜ん、よく分からないけど、お菓子が売れる様に仕組んでるんじゃないかな?」
祐輔「まあ日本人だから」
耕太「でも俺達も仮装して、お互いの家に行ったよな。あれはあれで楽しかったよ。」
「確かに、確か奈緒の所に皆んなで行ったら、マジ泣きしてたよな」
耕太「あれから奈緒が大人しくなったって説もあるぞ」
祐輔「誰の説だ、それは」
そんな昔話をしながら別れた。
マンションに着いて、エレベーターに乗り、玄関を開ける。
あれ?
電気がついてない!
何で?
玄関に入り、
「母さんいる?」
玄関の電気のスイッチを押すが、電気がつかない。
強盗?
「母さん!」
と玄関を開けっ放しにして、リビングに向かう。
「母さん?どこ?」
「後ろよ」
と後ろから声がしたので、後ろを振り向きながら
「何だ後ろか・・・」
振り向いてみると、そこにはゾンビのお面を被った3人が立っていた。
僕はビックリして、足がすくみ、尻もちをついた。
すると家の電気が全てついて、ゾンビが僕を見つめる。そして3人共ゾンビのお面を取った。
そこには母と奈緒と美緒の姿があった。
奈緒「勝利、ビビり過ぎだよ」
と笑いながら言う。
「何だよこれ?ドッキリかよ?」
奈緒「今日はハロウィンだよ。
やっと積年の恨み晴らせたわ」
やはりそうきたか、でもこれはハロウィン?
せめてジャックオーランタンで驚かすならわかるが、ゾンビって・・・
3人の笑顔を見て、まあ楽しそうだからいいか
と思う。
母「ちょうど、買い物の帰りに奈緒ちゃんと美緒ちゃんに会って、ハロウィンだから驚かせちゃおうって事になったのよ。」
うちの母は黙っていると、どんどん調子に乗るので、ちょっとだけ釘をさす。
「へえ〜、ハロウィンってお化け屋敷の事だっけ?」
「まったく、夢が無いなあ。」
?
「これって、夢と関係無いだろ!」
「あ〜ヤダヤダ。奈緒ちゃんも美緒ちゃんも、こんな夢の無い男に引っかかっては駄目よ」
奈緒が「は〜い」と返事をする。
すると美緒が
「でも、いい所もあるわよ。海でも助けてもらったし・・・」
と顔を赤らめる。
「そうだよ。聞いたか!俺にもいいところがあるんだぞ」
そんな話をしていると莉乃からLINEが届く。
美希ちゃんと仮装した写真の写メに、happy Halloweenと書かれていた。
後ろにいた美緒がLINEの写メを見て、僕に質問する
「誰?
勝利ちゃんの彼女?」
「ううん。今アタック中の娘だよ」
「ふ〜ん。そうなんだ」
「まだ美緒には、恋愛は早いだろ?まだ小学校卒業して、間もないもんな。」
「今時の中一は、結構進んでいるんだから。
あんな事やこんな事だって、やってる子が多いのよ!」
「えっ美緒もあんな事やこんな事を知ってるのか?」
「私はまだだけど・・・
て言うか、中一でも大人だと言ってるの!」
「良かった。美緒は俺達の妹みたいなもんだから、心配しちゃったよ」
「妹?」
「俺も祐輔も耕太も、お前の事を心配してるんだぞ」
ちょっと不機嫌そうに
「まっ今日はいいわ」
?
そして母が、
「今日はハロウィンだからピザとったわよ。奈緒ちゃんのお母さんも来るって」
奈緒が喜んだ。
「そうだ、お前心城学園の吹部の推薦断ったんだって?」
「うん。私はもう吹奏楽を辞めるから」
「えっ勿体ない。唯一お前が誇れるものなのに!」
「私には、吹奏楽より誇れるものがあるの」
「そ〜なのか?」
「そうなの」
その後、奈緒の母も合流してハロウィンパーティーが、我が家で行われた。
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