第5章 遠い甲子園への道のり

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心城学園を後にしようとグラウンドから校門に向かっていると、吹奏楽の演奏が聞こえて来た。 近藤「おっ吹奏楽かあ。 俺の彼女も吹奏楽やってるんだよ」 ! 皆んなが一斉に食いつく。 耕太「お前が彼女? 嘘だろ?」 祐輔「動物愛好家か?」 近藤「ふざけるな!俺の彼女に何て事を言うんだ。」 耕太「いつから付き合ってるんだよ?」 近藤「実は昨日、いきなり付き合って下さいって、言って来たんだよ。 ほら証拠写真」 と皆んなに写メを見せつけた。 祐輔「あっ」 僕も覗き込みと、近藤の写メに写っていたのは、莉乃の友達の美希ちゃんだった。 そうか、だから珍しく祐輔が女の写真に反応したんだ。 耕太「あれ?この子って確か、」 祐輔が耕太の口を塞ぐ 近藤「何だお前達、妬いてるのか? 今度紹介してやるよ」 全員で 「いや、いいよ」 耕太「そういえば、ここの吹奏楽って強いらしいんだよ。確か奈緒もここから吹奏楽で推薦来てたけど、断ったらしいぞ」 「へえ〜そうなんだ。知らなかった」 祐輔「また、この二人のバカに付き合うのが面倒くさかったんだろう」 「そういう祐輔は、誰が好きなんだよ?」 少し照れ臭そうに 「女?まあ敢えて言えば彩香かな」 少し落ち着きがなさそうに、そわそわしている。祐輔のこんな表情を始めてみた。 耕太「じゃあ、付き合っちゃえよ。」 祐輔「俺もこれでも考えがあるんだよ。 中学校の卒業式に告白する。」 「今でも付き合えると思うよ?」 「これでも、この5人の関係は好きなんだよ。 だからバラバラになる最後の日にしたんだ。 もうこれ以上、言わせるな!」 何だ。普段滅多に口にしない5人の関係を、祐輔がそんな風に思っていたとは意外だったが、何だか嬉しかった。」 すると耕太が 「よし!俺も卒業式。奈緒に告白するぞ!」 僕は告白は無理だろうけど、せめて喋れる様になってたらいいなあと思っていた。 そして甲子園への不安だけが積もった日曜日は終わった。 今日も莉乃にLINEを送る (今日は心城学園の試合を観に行きました。 結果は大敗、前途多難です。 それと近藤が美希ちゃんと付き合ったって言ってたよ) すると10分後に返信が届く (美希は高校野球オタクだから、高校で活躍しそうな人に交際を申し込んでいるみたい。困ったものです。最後に言った人が付き合ってくれたと喜んでました。) これは恋愛と言うのだろうか? そして最後に (おやすみ) すぐに (おやすみ) これが僕と莉乃の日常だ。 ちょっと物足りないけど、この頃は写メも送ってくれるので、少し近づいた気分になる。 早く会える日がくるといいなあ 翌日からの放課後は、3人でトレーニングに励んだ。 完全に硬球に慣れる為に、部活には顔を出さずにひたすら走り込んだり、ピッチング練習を繰り返す。 ただ耕太はたまに部活に行き、フリー打撃の練習だけ参加しに行く日もあった。 そして10月31日、世の中はハロウィンで盛り上がっているが、僕達はいつもの様にトレーニングを終えて帰っていた。 耕太「ところでハロウィンって、収穫祭だろ?何で日本でも盛り上がっているんだ?」 「う〜ん、よく分からないけど、お菓子が売れる様に仕組んでるんじゃないかな?」 祐輔「まあ日本人だから」 耕太「でも俺達も仮装して、お互いの家に行ったよな。あれはあれで楽しかったよ。」 「確かに、確か奈緒の所に皆んなで行ったら、マジ泣きしてたよな」 耕太「あれから奈緒が大人しくなったって説もあるぞ」 祐輔「誰の説だ、それは」 そんな昔話をしながら別れた。 マンションに着いて、エレベーターに乗り、玄関を開ける。 あれ? 電気がついてない! 何で? 玄関に入り、 「母さんいる?」 玄関の電気のスイッチを押すが、電気がつかない。 強盗? 「母さん!」 と玄関を開けっ放しにして、リビングに向かう。 「母さん?どこ?」 「後ろよ」 と後ろから声がしたので、後ろを振り向きながら 「何だ後ろか・・・」 振り向いてみると、そこにはゾンビのお面を被った3人が立っていた。 僕はビックリして、足がすくみ、尻もちをついた。 すると家の電気が全てついて、ゾンビが僕を見つめる。そして3人共ゾンビのお面を取った。 そこには母と奈緒と美緒の姿があった。 奈緒「勝利、ビビり過ぎだよ」 と笑いながら言う。 「何だよこれ?ドッキリかよ?」 奈緒「今日はハロウィンだよ。 やっと積年の恨み晴らせたわ」 やはりそうきたか、でもこれはハロウィン? せめてジャックオーランタンで驚かすならわかるが、ゾンビって・・・ 3人の笑顔を見て、まあ楽しそうだからいいか と思う。 母「ちょうど、買い物の帰りに奈緒ちゃんと美緒ちゃんに会って、ハロウィンだから驚かせちゃおうって事になったのよ。」 うちの母は黙っていると、どんどん調子に乗るので、ちょっとだけ釘をさす。 「へえ〜、ハロウィンってお化け屋敷の事だっけ?」 「まったく、夢が無いなあ。」 ? 「これって、夢と関係無いだろ!」 「あ〜ヤダヤダ。奈緒ちゃんも美緒ちゃんも、こんな夢の無い男に引っかかっては駄目よ」 奈緒が「は〜い」と返事をする。 すると美緒が 「でも、いい所もあるわよ。海でも助けてもらったし・・・」 と顔を赤らめる。 「そうだよ。聞いたか!俺にもいいところがあるんだぞ」 そんな話をしていると莉乃からLINEが届く。 美希ちゃんと仮装した写真の写メに、happy Halloweenと書かれていた。 後ろにいた美緒がLINEの写メを見て、僕に質問する 「誰? 勝利ちゃんの彼女?」 「ううん。今アタック中の娘だよ」 「ふ〜ん。そうなんだ」 「まだ美緒には、恋愛は早いだろ?まだ小学校卒業して、間もないもんな。」 「今時の中一は、結構進んでいるんだから。 あんな事やこんな事だって、やってる子が多いのよ!」 「えっ美緒もあんな事やこんな事を知ってるのか?」 「私はまだだけど・・・ て言うか、中一でも大人だと言ってるの!」 「良かった。美緒は俺達の妹みたいなもんだから、心配しちゃったよ」 「妹?」 「俺も祐輔も耕太も、お前の事を心配してるんだぞ」 ちょっと不機嫌そうに 「まっ今日はいいわ」 ? そして母が、 「今日はハロウィンだからピザとったわよ。奈緒ちゃんのお母さんも来るって」 奈緒が喜んだ。 「そうだ、お前心城学園の吹部の推薦断ったんだって?」 「うん。私はもう吹奏楽を辞めるから」 「えっ勿体ない。唯一お前が誇れるものなのに!」 「私には、吹奏楽より誇れるものがあるの」 「そ〜なのか?」 「そうなの」 その後、奈緒の母も合流してハロウィンパーティーが、我が家で行われた。
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