第6章 覚悟

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第6章 覚悟

1月1日(元旦) 莉乃は人混みは苦手なので、結局いつもと同じ3人組で近くの神社に行く事になった。 今年の願い事は、甲子園に行く事にしようと、誓い合っていたが、実際神様にお願いしたのは、それぞれが想いを寄せている子との恋が実る事をお願いしていた。 祈祷が終わると、神社の鳥居から彩香の姿が目に入る。 耕太「あれ?あそこに彩香がいるぞ!」 どうやら家族ときている様であった。 彩香も僕達に気づき、両親と共にこっちに向かってくる。 父親はあまり集まりにも来ないので、久し振りに見た感じがした。 彩香の母親が僕達に話し掛ける。 「明けましておめでとう。」 僕達もほぼ3人が一緒に 「明けましておめでとうございます。」 そして彩香の父親が続いた。 「明けましておめでとう。今年もよろしく」 と笑顔で言った。 精神科病院の院長をやっていると聞いているが、威張った様子も無く、優しそうな父親である。 そして最後に彩香が 「明けましておめでとう。今年もよろしくね。」 と言って挨拶を終える。 耕太「あれ?奈緒と一緒じゃあないんだ?」 「奈緒は、猛勉強中よ。 別に勉強しなくても奈緒なら余裕で受かりそうだけど」 僕達は奈緒が行く高校を聞いていなかったので、耕太が彩香に聞く 「奈緒は何処の高校受けるか知ってるのか?」 「勿論、知ってるわよ。でも、その様子だと奈緒は言ってないみたいだから、私からは言わないわよ。 もし聞きたいなら、本人に聞いてね」 勿体ぶった言い方で言って来た。 すると奈緒の母親が 「相変わらず仲が良いわね。 もしかしたら、この中で将来の彩香の旦那さんがいるのかもね。 ねえ、あなた?」 「まあそうだな、楽しみだな」 と笑顔で言った。 ただ、目は笑っていなかった様に感じた。 僕の思い過ごしならいいが・・・ そんな会話を終えて、彩香の家族と別れた。 耕太「奈緒はどの高校に行くんだ? 祐輔聞いてないか?」 祐輔「この中で旦那かあ」 とさっき母親が言った事を自分に置き換えて妄想している。 やけに気になっている耕太に言う。 「耕太聞いてみろよ」 「嫌だよ、勝利が聞いてくれよ」 「えっ俺がわざわざ聞くのって、おかしいだろ」 「平気だよ。ハロウィンパーティー一緒にやる仲だろ」 「あれは、うちの母親が・・・」 耕太がまるで僕をイエス様のように、両手を合わせてお願いしている。 この頃、このパターンが多い様な気がするが、どうもその態度をされると断れない。 「分かったよ!聞けばいいんだろ!」 僕は携帯を取り出して、奈緒に電話を掛けた。 するとすぐに電話に出る 「明けましておめでとう。 ところで何?」 「明けましておめでとう。 今、初詣に耕太と祐輔と来てるんだけど、奈緒がどの高校に行くのか話題になってたんだよ。 彩香が家族と初詣に来ていたから、聞いたんだけど教えてくれないから電話した」 「う〜ん。受かったら最初に勝利に教えるよ。 じゃあね」 と言うだけ言って電話を切られた。 「教えてくれなかったよ」 耕太は諦めた様子だった。 「あっ絵馬でも書こうか?」 すると耕太も祐輔も頷いた。 みんなそれぞれ、隠れながら絵馬を書いて、見えない様に絵馬が掛けられているふだの前から1、2個取り外して、3番目くらいに自分の札を掛ける。 よし! そのままやり過ごせば、見せ合う事にならかったのに、耕太が僕の札を探して札に書いた内容を読んだ。 「莉乃ちゃんと付き合えます様に」 ! 僕は仕返しに、耕太の札を探して内容を読んだ 「奈緒と付き合えます様に」 耕太は悪乗りして、祐輔の札を見つけ内容を読む 「えっ?」 「何て書いてあるの?」 「彩香と結婚できますように」 ! 祐輔が少し照れて 「これはしょうがないだろ!親の期待に応えないといけないからな」 もう完全に彩香の旦那になった気分になっている。 いつも、僕達をちょっと上から見ている印象が強い祐輔だが、今日は同じ目線の同じ中学生に感じた。 幼馴染っていいなあ と思える初詣であった。 ところがその夜 彩香家では、正月早々、親子でのバトルが勃発していた。
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