第7章 片想い

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第7章 片想い

(今度の日曜日、制服を買いに行こうと思うんだけど、一緒に行かない? 出来たら池袋西武デパートに行く予定です。) 今度の日曜日は2月10日かあ どうしようかな? 確か美希がチョコレート買いに行こうと言ってた気がしたけど。 でもデパートならチョコレートも豊富だしいいかな? (OKです。制服売場に11時でどう? その後にご飯食べよう。 あっそれと友達の美希も一緒でいいかな? チョコレート買う約束しているから) するとすぐに返信が届いた。 (奈緒も一緒に行くね) 確か、奈緒ちゃんが勝利と同じ高校に行ったと勝利から聞いていた。 ただ、同じ高校に行くからでは無く、奈緒ちゃんに会うのは気が進まない理由が別にあった。 そして2月10日を迎えた。 取り敢えず美希とは、彩香ちゃん達と会う前に、駅で待ち合わせをする。 珍しく美希が先に待ち合わせの場所に着いていた。 「ごめん、待った?」 「ううん。全然大丈夫。莉乃もチョコレート買うの?」 「作ろうか迷ってるのよ。でも渡せるか、分からないよね? 2月14日は木曜日で学校だから」 「部活も無いんだから、向こうに行ったっていいでしょ! アイツの駅まで何分ぐらいなの?」 「30分」 「行って帰ってきたって1時間よ!」 「そうなんだけど、まだ話せないし・・・」 「もう、莉乃は!そんな事してると、誰かに取られちゃうよ!」 その言葉を聞いて、奈緒ちゃんの顔が浮かんだ。 一気にテンションが下がる。 美希は、言いすぎた事に気付き、慌てて弁明する 「物の例えよ。そんな事あるはず無いわよ あっそろそろ行こうか?」 と半分誤魔化して目的地の西武デパートの制服売場に向かった。 制服売場に行くと、彩香ちゃんと奈緒ちゃんが既に会計を済まして待っていた。 「どうしたの?」 と彩香ちゃんに聞くと 「10時に来て、1番で終わっちゃった。」 「奈緒ちゃんも?」 「うん」 と奈緒ちゃんが頷いた。 彩香「ねえ、セーターって、既製品じゃないとダメなのかな?」 美希「既製品じゃなくても大丈夫よ。 貴方が彩香ちゃん? 初めまして、美希です。 これからもよろしくね。」 彩香「じゃあ美希ちゃん、セーターを一緒に見てくれる?」 美希「いいよ」 と二人でセーターを見に行ってしまった。 奈緒ちゃんと二人で取り残された。 「・・・莉乃ちゃん?」 「何?」 「私、心城学園に入学したの。ごめんね」 「何で謝るの?奈緒ちゃんは、奈緒ちゃんの想いを貫いていいのよ。私に遠慮しないでね。」 「ううん。勝利の恋人になる事は諦めているから、心配しないで。 ただ、勝利の夢だけは、近くで見たいの 小さい頃から、勝利の夢を聞いてきたから、その夢が叶う瞬間を近くで見たいの 勝利の夢が叶う事が、今までの私の夢なんだ。」 「奈緒ちゃん・・・・」 「ごめんね莉乃ちゃん。心配だよね」 私は心城学園に奈緒ちゃんが入った事で会いたくないのでは無く、奈緒ちゃんの勝利への想いの深さを聞くのが辛くて会いたくなかった。 私の勝利への想いが、薄っぺらく見えてしまうからだ。 「ううん。私と勝利は恋人では無いんだから気を使わなくていいんだよ。」 奈緒ちゃんは目を潤ましながら 「ありがとう、本当にありがとう。」 恋では強敵だけど、憎めない。この子の言う事は嘘が一つも無いように感じる。 それ以上に、彼女を守ってあげたくなってしまう。 「奈緒ちゃんだって、恋も諦めないでいいと思うよ。」 あっ言っちゃった。これは言わないようにしていたのだが・・・ すると奈緒ちゃんが私の胸に飛び込んで、泣きながら 「ありがとう。でも、それは出来ないの。勝利は好きな人しか見えないから。」 「奈緒ちゃん・・・ でも私と勝利なんか、まだ4回しか会っていないのよ。 それに私と出逢った時は、彩香ちゃんの事を好きだった筈でしょ」 「あの時は、彩香から心が離れ始めていた時だったの。 でも勝利は、彩香以上の愛情を莉乃ちゃんへ持っているのは分かるわ」 「そんな事無いでしょ」 「10年に及ぶ片思いなんだから、分かるわ。 分かっちゃうの」 と私の胸で泣き続けた。 すると美希と彩香が帰ってくる。 美希「莉乃が奈緒ちゃんを泣かせた!」 「えっ違うよ。ねえ奈緒ちゃん」 すると胸から離れ、涙を拭きながら笑顔で 「いじめられちゃった」 と冗談じみた言い方で言った。 「もう奈緒まで、ヒドイ!」
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