第7章 片想い

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美希「ご飯食べに行こうよ!」 「そうね。でも、まだ11時よ」 彩香「そうだ!今日はウチには誰も居ないから、ウチに来る? それに二人にはいいものが見えるわよ」 と意味深な笑みを浮かべた。 奈緒「彩香の家かあ。 久しぶりだなあ」 「じゃあ行きましょう」 と私が言うと、4人は彩香ちゃんの家に向かい始めた。 駅を降りて、途中のコンビニで昼食を買う。 そしてマンションがズラリ並んでいる場所へ入る。 「え〜これって何棟あるの?」 奈緒「ちょうど10棟あるの、G棟まであるんだよ。」 彩香「私はA棟、奈緒がB棟、勝利がD棟、祐輔がE棟で耕太がC棟なの。 幼稚園の時に、各棟の代表の親が話し合いを行ったのがキッカケで今のママ達が知り合いになったんだ。 F棟以上は、その後に出来た棟らしいわ」 「そうなんだ。面白いね」 そう言いながら、A棟のエントランスを抜けて、エレベーターに乗る。 15階建ての15階のボタンを押した。 そして15階に着くとドアが2つしか無い。 手前と奥にもう一つのドアが見える。 美希「このマンションって、各階2部屋しか無いの?」 奈緒「最上階だけは、作りが違うのよ。 私達の家は3LDKだけど、確か最上階は・・」 彩香「5LDKだけど、ただ広いだけよ。3人家族では大きすぎるわ。 結局、いつもリビングにいるだけだから」 と言いながら奥のドアに向かった。 ドアを開けると正面が壁になっていて、正面の壁伝いに左に歩いて行くと大きなリビングが見えた。 あれ? 人がいる 彩香「ママ!何でいるの?」 「何でって言われても、パパに途中で逃げられちゃった。」 「逃げられたって?」 「今日の午後から学会で沖縄に行くんですって」 「沖縄?」 「うん。学会なのに、ゴルフバック持って出かけたわ。何で先に宅急便で送らなかったのかしら?」 何だこの会話? それに問題は宅急便では無いと思うが・・・ しかし、このやり取りって、何か演技っぽい気がしたのは、私だけだろうか? 彩香ママが、私に気付き近寄って来た。 「貴方が莉乃ちゃん?」 「はい」 ? 「後で二人で話をしましょうね」 と笑顔で言ってきた。 何だかよく分からず 「はい・・」 と答える。 20畳近くあるリビングに彩香ママも加わり、一緒に昼食を食べる。 そして昼食を食べ終わると、彩香ママが 「そろそろよ」 ? 彩香ママがベランダに出ると 「ほら始まったわよ。皆んなも来なさいよ」 その言葉に誘われてベランダに向かう。窓を越えるとやたらと広いベランダが目に入った。 普段ならば屋上として使われるのだろう、広いベランダは、人工芝が敷いてあり、ゴルフのパターの練習をしているのだろう丸く穴が開いたゴルフカップがある。 凄い! 彩香ママのいる方に向かうと、公園が目に入る。 ! 勝利だ! さっき言ってた祐輔君と耕太君だろう3人組が目に入った。 特に声も掛けず、黙って3人が野球をやっている様子を眺めている。 美希「あっ大野君だ!」 そういえば大野君と付き合っていたと、美希は言っていたが、勝利の話だと違うみたいだった事は聞いている。 彩香ママ「そうよ。彩香のもしかしたら旦那さんになる人よ」 彩香「ママ!それは言ってはダメよ!」 「何で?みんなに宣言した方がいいのよ。こういう事は」 美希は黙ったままだった。 それにしても、やけに真面目に練習をしている。 ランニング、準備運動、ストレッチと黙々と行なっている。 ただ見てるだけで、こんなに幸せを感じている自分が不思議だ。 ただ、高校に入ってからは、奈緒ちゃんがもっと近くで勝利が頑張っている姿を見る事に、羨ましさと一抹の不安を感じる。 「寒いわね」 と彩香ママが言いながら部屋に入っていく。 もう少し見ていたかったけど、一度部屋に戻った。 「ねえ莉乃ちゃん、ちょっと来てくれる?」 と言われ 「はい」と返事をして、リビングの近くにある部屋に入っていく彩香ママに続いて、部屋に入った。 「ドアを閉めてくれる?」 私はドアを閉める。 6畳ぐらいある部屋は、本棚が左右と奥にあり、真ん中に4人掛けのテーブルが置いてあった。 ここは何の部屋だろう? 「ここは、私の勉強部屋よ」 本の多さに圧倒されながら、質問する。 「何の勉強ですか?」 「心理学よ。実は臨床心理士の資格を持っていて、以前も常勤として心理士として働いていたのよ。 今は、週に2日だけ主人の病院でカウンセリングを行なっているのよ」 「はあ」 「でっ、男性恐怖症を治したい?」 ! そういう事か 「はい。治したいんですが、薬は出来れば飲みたく無いんです。」 「そうか。じゃあ私と何回かカウンセリングを行うのはどうかしら?」 「それで治るんですか?」 「う〜ん、多分ね。今の莉乃ちゃんを見ていると、深刻な症状にはなっていないみたいだから、可能性は充分あると思うわよ。 ただ、お父さんの許可だけは、もらっていいかしら? 勿論、お父さんも一緒に来てもらってもいいわよ」 「はあ、ところで、どんな治療なんですか?」 「そうね。例えば最近、恥ずかしい事や嫌だった事って無い? 先生に怒られたとか?」 「はい、金曜日に先生に注意されて、ちょっと恥ずかしかった事がありました。」 「でも、私が教えてと言ったから、今の事を思い出したのよね?」 「はい」 「これはキチンと過去の出来事として記憶しているから大丈夫なのよ。」 「震えが止まらなくなるって事は、過去の悪い記憶が過去の記憶となっていなくて、現在も凍ったまま継続されているの、そして同じ様な事が起こると、解凍されて現在の記憶として蘇っちゃうの だから、凍った記憶をカウンセリングで、過去を思い出す事で解凍させて、キチンと過去の出来事として記憶させるのよ」 「そんな事って出来るんですか?」 「何回か、過去の記憶を思い出すカウンセリングを行っていき、その時の恐怖に感じた事は、その時の恐怖で、今の恐怖では無いと分かるまで続けるの 勿論、本当の記憶だから、細かい事まで思い出して、その正しい出来事をキチンと過去の出来事として記憶する治療よ 金曜日に注意された先生の事の様にね」 何となくだけど分かった感じがする。 「少し良くなったら、勝利君を呼んで、直接話すのもいいと思うわよ」 えっ本当! なんか今の言葉で、一気にテンションが上がった。 「じゃあ、父に聞いて連絡します。」 「主人は人間的には、どうかと思うけど、精神科医としては、ちゃんと仕事できるから安心していいと思うわよ」 「はい」 希望の光を感じた瞬間であった。 そして彩香ママと一緒にリビングに戻った。 すると、どうやらバレンタインの話で盛り上がっていたみたいで、私達が戻ると 彩香「ママ、13日にここで皆んなとチョコレート作りしてもいい?」 彩香ママは笑顔で 「いいわよ」 すると美希が 「やった〜」 と大声で喜んだ。
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