第8章 決意

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勝利達が家に着いた。 私と美希は二人で彩香ママの部屋で待っている。 美希「ねえ莉乃?私は何するの?」 「これから勝利を呼んで、今起こっている症状を見るんだと思うよ。」 「何か怖いね」 「うん」 彩香ママが部屋に来て、 「美希ちゃん、ちょっといい?」 美希が彩香ママに呼ばれて部屋を出て行った。 5分ぐらい経った 彩香ママだけ、部屋に入ってくる。 「これから別の部屋に行くからね」 と私に言うと一緒に部屋を出て、横の部屋の前に着いた。 彩香ママ「開けるわよ」 部屋のドアが開いた。 部屋はお父さんの書斎なのだろうか大きな机があり、パソコン機器や本棚が置いてある。 大きな机の椅子に、こっちを向いて美希が座っている。 そして机に向かって座っている勝利の後ろ姿が見えた。 彩香ママ「どう?震える?」 「いいえ、今は大丈夫です。」 彩香ママ「勝利君、こっち向いて」 その言葉に、勝利が振り返る。 勝利と目が合う。 あっ! 震えてきた。 彩香ママが私の手を握ってくれた。 でも、震えが止まらない。 彩香ママ「一回部屋から出ましょう」 震える身体を屈む様に身を縮こませながら、彩香ママの後を追う様に部屋を出た。 彩香ママの部屋に二人で戻り、椅子に座る。 彩香ママ「ねえ莉乃ちゃん、震えた時に過去を思い出したでしょ? でも思い出したのは、お母さんを連れて行った男性では無くて、お母さんでは無かった?」 ! 彩香ママが言う通り、私は母の事を思い出していた。 正確に言うと、あの男と母が手を繋いで家から出て行く状景だった。 「はい。確かに母の事を思い出しました。」 「やっぱりそうなのね。 ちょっとそのままで待っててくれる。」 彩香ママが、部屋から出て行って、すぐに戻ってきて、閉まっているドアをノックしている。 わざわざノックするなんておかしいわ? もしかして、何か持ってきて両手が塞がっているのかも? 「今開けますね」 私はドアを開けると、勝利の親友の耕太君がドアの前に立っていた。 耕太君は、チョコレートフォンデュでチョコをたっぷりとつけたマシュマロを私の前に差し出した。 耕太「はい、マシュマロ」 「あっありがとう」 とマシュマロを受け取った。 耕太君の後ろから、彩香ママが 「どう?震えなかったでしょ?」 本当だ! 震えない。 でも何で? 耕太君は、リビングに戻って行く。 彩香ママが部屋に入ってきて、椅子に座ると、私も先程と同じ様に、対面上の椅子に座った。 彩香ママ「大体分かったわ 小学生の時は、男子に少しでも触れたら過去の触られた事や叩かれた事を思い出して、震えたり話せなくなったち思うけど、今はその症状はほぼ治っていると思うわ」 ? 「ただ、母親が莉乃ちゃんをおいて、何処かに行ってしまった事がトラウマとして、恐怖を感じてる。 勝利君と話せなくなったのは、勝利君が女の子とデートしていると勘違いした時からよね」 「はい」 「大好きだった母が、莉乃ちゃんをおいて出て行ってしまった様に、好きになればなるほど、母の様に、莉乃ちゃんの前から居なくなってしまったらと考えてしまう様になってしまったの」 ! 確かにあの渋谷の時から、震えが止まらなくなった。でもキャンプでは一度も震えは起きなかった。 「キャンプでは一度も震えは起きなかったのは何で?」 「それは、まだそこまで勝利君の事が、大事だと感じなかったのだと思うわ。 キャンプから帰ってきて、段々と勝利君への想いが強くなって、莉乃ちゃんのとっても大事な人に変わったのだと思う。」 「これって治るんですか?」 「多分」 「多分?」 「過去の出来事を整理して、普通の過去の出来事とする事以外に、勝利君を信じる事が必要なの。思い描くだけで無く、心底信用できる存在にならないとダメ。 莉乃ちゃんがお父さんを信用している様に」 そうか、確かに父の事は、心の底から信用している。 でもそれは、長い年月を共に暮らしていたからこそ、信用出来ていると思っている。 果たして、この距離感で、そこまで信用する事が出来るだろうか? それって何年先の事になるのだろう? 彩香ママ「莉乃ちゃん、私も色々調べて、良い方法を考えるわ。 だから莉乃ちゃんも、諦めないでね」 「はい」 と頷くしか無かった。 その後は、私と美希が彩香ママの部屋に居て、奈緒ちゃんや彩香ちゃんがチョコレートフォンデュの機械を部屋まで運んでくれた。 私が作ったのを、奈緒ちゃんが勝利に運んでくれた。そんな微妙な感じで、1日早いバレンタインパーティーが終了した。 希望が近づいて来たと思った矢先の現実に、私はどうしようもする事が出来ない。 その歯痒さを感じながら、自分に苛立ち、絶望へと近づいている事を認識したのであった。
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