第8章 決意

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3月14日 ホワイトデーという文字が至る所で目にする。 バレンタインはチョコで、ホワイトデーは飴の筈が、チョコやクッキーなどが立ち並ぶ。 莉乃には会えないしなあ 今日は祐輔が彩香ちゃんと会う様なので、3人の練習は中止となった。 一昨日の莉乃の様子だと会っても大丈夫かな? イヤイヤ、ここで焦ってはダメだ。 と自問自答する。 まあ取り敢えず、コンビニでホワイトデー用のお菓子でも買っておくか。 既にお年玉も底をついた僕は、一番安い小指くらいのウサギの人形が付いているクッキーを買った。 一応莉乃にLINEを送っておくか 「具合はどうですか?具合が良くなったら会おうね。」 すぐに返信が返って来た。 「ホワイトデーなのに、ごめんね。治ったら出来なかったイベントをまとめてやろうね」 最後にハートのマークがついていた。 それだけで気分は上昇した。 自然とニヤけていたのだろう、横から声がした。 「何ニヤけているの?」 ! 横を向くと奈緒が、そこに居た。 「何でも無いよ! いきなりビックリするだろ!」 「知らないわよ、私だって、今マンションから出て来たところだもん」 「まあいいや。許してやろう」 「何も許されない事なんかしてないわよ」 「ところで何処に行くんだ?」 「買い物よ。勝利は?」 「今帰るところだよ。」 「じゃあ一緒に行く?たい焼き奢ってあげるわよ」 う〜ん。 これで行ったら、莉乃への裏切りになるのかな? 大丈夫かな 「しょうがない、その代わりチョコレートの入ったたい焼きにしろよ」 「分かったわよ」 と近くのスーパーに二人で向かった。 「そういえば奈緒?」 「何?」 「耕太からプレゼント貰った?」 明らかに動揺している様に見えた。 何かあったな 「う・うん、貰ったよ」 「何貰ったの?」 「それは言えないわよ。」 「何でだよ!教えろよ」 「カチューシャよ。」 「今付けてるやつか?」 顔を赤らめながら 「うん。だから言いたく無かったのよ」 「でも似合うよ、それ」 すると奈緒の顔が更に赤くなった。 「お前達も付き合うのか?」 奈緒が慌てた様子で 「付き合わないわよ!何言ってるのよ!」 「そうなのか」 そしてスーパーに着いて、奈緒の後をついてまわる。 あれ? やけに高そうな牛肉に手を伸ばす。 えっ! 「そんな高いの買うのか?」 「そうよ、今日はすき焼きなんだ。」 「なんかいい事でもあったのか?」 少し怒りながら 「私の誕生日よ!」 あっそうだ!ホワイトデーは奈緒の誕生日だ。すっかり忘れてしまっていた。 「そうだったよなぁ。誕生日おめでとう!」 「はいはい、ありがとう」 誕生日の人に、たい焼きをねだるのはどうしたものだろう? 「奈緒、たい焼き要らない。買い物を付き合うのが、誕生日プレゼントだ。 ありがたく受け取れよ」 さっきと同じ様に 「はいはい、ありがとう。」 会計を済まし、レジ袋に買った材料をしまう。 「ほら、貸せよ。持ってってやる。」 すると奈緒が僕にレジ袋を渡した。 「食べないでね」 「おいおい、さすがに俺でも生肉は食べないぞ」 スーパーを出た所にたい焼き屋がある。 奈緒はたい焼き屋に向かう。 「おい、奈緒。今日はいいよ。 買うなら俺が買うよ!」 「何言ってるの、もうお年玉も無いでしょ」 さすがに分かってらっしゃる 奈緒がたい焼きを二つ持ってきた。 「はい」 とたい焼きを差し出してくる。 両手が塞がっている僕を見て 「そこ座ろうよ。」 と奈緒がベンチまで走り、座った。 「ここで何回、勝利とたい焼き食べたかなあ」 と唐突に話し始める。 「そうだな。いっぱい食べたなあ」 「殆ど私の奢りだけどね」 「それは、買い物に付き合ってあげた対価だよ」 「こんな日がいつまで続くのかしら」 「お前が耕太と結婚して、俺が莉乃と結婚して、更に祐輔と彩香ちゃんが結婚して、みんな隣に住めば、ずっと続くかもしれないぞ」 「はいはい、じゃあ行こうか?」 と半分呆れた表情で言って、立ち上がった。 そして、マンションまで戻る。 「はい荷物」 とレジ袋を奈緒に渡す。 「ありがとう。」 そうだ! 「これ、誕生日プレゼント」 と、さっきコンビニで買ったお菓子を渡す。 「えっ!いいの?」 と笑顔で言ってきた。 とてもコンビニで一番安い品物だと言えなかった。 「ありがとう。一生大事にするからね」 えっ!そんな大それた物では無いんだけど・・・ 「おい、そんな立派な物では無いぞ」 「ううん。だって勝利が私に始めて買ってくれた物だから」 と言いながら、走ってマンションに入って行った。
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