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今日は祐輔とデートだ!
3月14日の午前授業が終わり、急いで家に帰り私服に着替える。
鏡で服装をチェックして
よし!
そして私のマンションのA棟前に向かった。
案の定、祐輔はいなかったが、今日のデートにワクワクしながら祐輔を待った。
早く来ないかな
するとこっちへ向かって走ってくる祐輔の姿が見えた。
私の目の前まで走り、息を切らしながら
「ごめん」
と一言謝った。
「ううん、全然待ってないわよ。さあ行来ましょう!」
「うん」
と言って歩き出した。
「でっどこ行くの?」
「スカイツリー」
祐輔が、まともなデートスポットを言うとは思わなかったので、ビックリした。
「何でビックリしてるの?」
「あっごめん。何でも無いよ。」
電車に乗って、スカイツリーがある押上を目指した。押上までは30分もかからないので、本当にあっという間だったが、二人で乗る電車は、とても新鮮であった。
押上に着き、スカイツリーへ向かう。
「ねえ祐輔、展望台に行くの?」
「うん」
何だろう?
いつも口数は少ないが、今日は特に口数が少ない。
何か緊張している様にも感じる。
ホワイトデーなので、相当混んでると思ったが、平日の昼間という事もあり、意外とスンナリと展望台に上がれた。
展望台に上がり景色を眺める。
「わあ、アソコが家かな?」
「うん」
祐輔の顔が青ざめている様だ
「祐輔、大丈夫?」
すると、ホワイトデーのプレゼントだろう、紙袋が差し出された。
私は紙袋をもらい
「ありがとう。開けてもいい?」
「うん」
と返事を貰う前に紙袋を開け、中から大きい熊のぬいぐるみが現れた。
4、50cm程ある熊は、ピンク色でお腹の白い部分にハートの模様がある、可愛い熊だ。
私は、この熊を買う祐輔を想像して、つい微笑んでしまう。
「祐輔、ありがとう。」
「うん。
なあ彩香?」
「何?」
「俺は明日から高校に行く。そして、俺と同じ様に推薦で入学した奴等と初対面する事になる。」
「そっか」
「多分、俺の実績は一番低いかも知れない。あそこの学校は全国を目指すために全国から優秀な生徒を推薦しているだろうから、実績が無い俺が勝ち抜くには、最初から全力で実力を認めさせる必要がある。」
「ふ〜ん、大変だね」
「俺は一年でエースの座を奪い、絶対的な存在にならなければ、彩香に似合う男にはなれない。
正直言って不安しか無い。ここで同じ歳の奴が、俺より遥かに凄い投手がいたら、甲子園で優勝どころか、レギュラーにもなれない。」
祐輔の弱音を始めて聞いた。
「祐輔らしく無いわよ!
どんな相手だって、祐輔なら大丈夫よ。私は祐輔を信じてるから」
急に祐輔の顔が紅潮し始めた
「彩香!
お・おれに、ちからを貸してくれないか?」
?
「ちから?」
「頼む。明日からいつでも彩香を感じれる力が欲しい。」
?
「どんな?」
と言うと祐輔が私を抱いて来た。
私は祐輔の胸に包まれる。
祐輔の心臓が激しく音を鳴らしている。
そして、両肩に祐輔の手が伸びて、祐輔の胸から顔が離れると、正面に祐輔の顔が近づいてくる。
私は目を閉じた。
ホワイトデーのスカイツリーの展望台で、二人は唇で結ばれたのであった。
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