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第9章 卒業
3月19日 卒業式
この3年間、結局何も成し遂げないまま卒業する。
野球にしても恋愛にしても、中途半端な学校生活を送ってしまった。
小さい時から彩香ちゃんの事を好きで、彩香ちゃんより背が大きくなったら告白するつもりだったが、結局、祐輔の事を好きだった彩香ちゃんに告白できなかった。
ただ、夏休みで莉乃と出会い、新たな恋愛が始まった。
それもまだ、恋人になった訳でも無い。
野球に対しても、最後まで補欠のまま中学の野球生活は終わってしまった。
野球も夏以降に、心城学園の野球推薦入学が決まった。
中学生活では、恋愛も野球も中途半端なまま終わってしまう一抹の寂しさを感じてしまう。
だからと言ってつまんない学校生活だった訳では無い。
一時祐輔と仲たがいをした時もあったが、この5人組がいたからこそ、楽しい中学校生活を送れた。高校では祐輔と彩香ちゃんとは、別の高校になってしまうが、決して縁が切れる訳では無いと信じている。
そんな中学校生活を思い返しながら、卒業式に参加した。
体育館で卒業証書を授与して、教室に戻る。
教室では、横の奈緒が、ず~と泣いている。
「お前、泣きすぎだぞ」
「だって悲しいんだもん」
ポケットからティッシュを出して、
「ほら、鼻水」
「ありがとう。勝利ありがとう」
何故こんなに奈緒が泣いているのだろう?
感受性が豊なのか?
そして先生が教室に入ってきて、この1年間の思い出を語りながら、最後の言葉を述べた。
先生の言葉に何人かは涙を流すが、僕も感動はしたけど、涙を流す程の感動はしなかった。
そして、お決まりの先生へのメッセージを込めた色紙を渡して、最後のホームルームは終了する。
そして、少し経つと放送が流れる。
「卒業生は中庭に集まってください。」
最後に在校生が、中庭から校門まで卒業生を見送る事になっている。
先生達が考えた事だが、校門から出ても直ぐに学校に戻って、友達と記念写真等を取ったり、別れを惜しむ生徒同士が最後の話をする。
まったく意味のない儀式にだな
僕達のクラスも中庭へと移動した。
各クラスが中庭から校門まで2列に並んで歩き始める。
そして僕たちのクラスも中庭から校門まで歩き始めた。
?
右手に手の温もりを感じる。
奈緒だ。
「何やってんだよ!恥ずかしいだろ」
泣きながら
「お願い、学校を出るまでだから、校門を出たらもうしないから」
どうしようか?
しょうがない!
「学校出るまでだからな!」
泣きながら
「うん」
ポケットからティッシュを取り出して
「その前に、鼻水を吹けよ」
「うん」
結局、奈緒と手を繋いで校門を出たのであった。
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