第2章 それぞれの想い

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携帯のバイブ音が、流れては消え、流れては消えてを繰り返えす。 相手は全て勝利だった。 話したくない! 私は携帯の電源を切った。 家に着いて、何も言わず部屋に閉じこもる。 日曜日で家に居た父が、異常に気づき、私の部屋のドア越しから 「莉乃大丈夫か?何かあったのか?」 心配して言ってくれているのは分かっているが、話したくない。 「莉乃!返事しろ!」 こんなに心配されるのが、鬱陶しいのは初めてだった。 その鬱陶しさは、段々と苛立ちに変わっていく。 「大丈夫だから、一人にして」 と苛立つ気持ちを抑えて返事をする。 「本当に大丈夫なのか?何かあったらパパに言えよ!」 その言葉に、抑えていた感情が爆発した。 もうそれは、怒鳴るというか、発狂に近かった。 「話し掛けないでよ! お願いだから一人にしてよ!」 私はベッドに飛び込み、両手で掛け布団を掴み、掴んだ掛け布団を口元に強く押し付け、声を出して泣いた。 こんなに泣いたのは何年振りだろう? しばらく泣き続け、泣き疲れると、私の心にポッカリと穴が空いた様に、何も考えれない放心状態となった。 放心状態から抜け出すと、徐々に気持ちが落ち着いて来た。 そして、小さい声で独り言を呟く。 やはり男は嫌だ・・・ そんな事を考えていると、いつの間にか寝てしまった。 「莉乃、ご飯出来てるぞ」 父の声で目を覚ます。 ご飯は食べたくないが、父にこれ以上心配掛けるのは心苦しい。 「今行く」 私はベッドから起き上がり、部屋を出てリビングに向かう。 リビングに入ると父は笑顔で、 「ごめん、出前にしちゃった。 莉乃は天丼にしちゃったけど、食べれるか?」 「うん。 さっきはごめんね。 取り乱しちゃって、でも、もう大丈夫だから」 父は内容を聞きたいのだろうけど、その事には触れず 「大丈夫なら良かった。 さあ食べなさい。」 父はリビングのTVをつけて、放送している番組の内容について語リ始める。 私が取り乱した内容を知らない父は、あえて男女関係、友達や勉強の中学生が悩みを抱える話題を避けて会話する。 ちょっとギクシャクした会話だったが、父の気遣いを感じた。 すると家の電話が鳴る。 父が受話器を取ると、私に向かって 「小野さんの息子さんから、電話だよ」 と受話器を私に差し出した。 どうしよう! このまま受話器を取らない訳には行かない。 私は父から受話器を受け取ろうとすると、手が震えて受話器を落としてしまった。 ! 落ちた受話器を拾うとするが、拒否反応からか、手が震えて受話器が取れない。 見かねた父が受話器を拾い、電話口で勝利に向かって話す。 「勝利君ごめんな。ちょっと莉乃は具合が悪くて電話に出れそうもない」 と言って、電話は切れた。 明らかに、男性への拒否反応だった。
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