第3章 恋愛交差点

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第3章 恋愛交差点

レギュラー全員との1打席勝負だが、僕みたいな変則投法の場合は、見慣れない球道に加えてタイミングも取りずらい。 1番打者が打席に向かおうとした時である。安川さんが 「監督、こんな変則投手だと1打席勝負だと、打者は不利だと思います。」 痛いところを指摘してきた。 監督が考える。 「確かにそうだな。じゃあ5回を投げて、合格ラインは1点以内に抑える。でどうだ?」 えっ!経験も少ないし、硬球にも慣れていないのに。 ちょっと不安が過ぎる。 すると耕太が 「監督ちょっといいですか?」 さすが耕太、僕をフォローしてくれるんだ。 監督「何だ?」 「いや、1点では甘いと思いますよ。0点が合格ラインでいいと思います。」 え〜そんな馬鹿な。 僕はサードの近藤に助け舟を出してもらおうと、近藤を見つめる。 すると目が合って、近藤がうなづいた。 「監督!」 「何なんだ一体。何だ近藤」 「ヒットを打たれたらアウトってのは、どうでしょう?」 おいおい、それはいくら何でも無いだろう。 監督「分かった。」 へっ? 監督「さすがにノーヒットは厳しすぎるから、0点で抑えれれば合格にしよう」 何で? それに今のやり取りで、レギュラー達の怒りがヒシヒシとここまで伝わって来る。 僕は 「すいません。後3球だけ投げさせて下さい」 監督「分かった」 もう破れかぶれだ! 僕は思いっ切り硬球を確かめる様にミットを目掛けて投げ込む キャッチャーミットの音が響きわたる。 耕太が 「やっと戻ったな」 と訳の分からない事を言って、ボールを返して来た。 3球の練習が終わり いざ!テスト! 1番打者はセンターの本田さんで、左打席にはいる。 さっきの守備といい、この人が一番怖い気がする。 第1球 何とセフティーバントだ。 打球は三塁前に転がる。 近藤がダッシュして投げる右手でボールを掴み、倒れながらファーストに投げた。 「アウト!」 凄い、近藤も凄いが、あれだけ早く処理されて、間一髪とは、何て足が速いんだ。 2、3番打者は連続三振。 4番打者が2、3番の選手に、球の特徴を聞く。 「さっきの投球練習より早いし、何か物凄く手前で伸びて来るというか、ボールが浮き上がる感じだよ。 とにかく今まで見た事ない球だよ」 4番打者のファーストの後藤が右打席に立つ、さすがに迫力がある。 何とかファールで追い込む。 秋山のリードは、内角のストレート。 僕は思いっ切り内角を投げる。 ズボッ! 「バッターアウト」 そして、5番はピッチャーゴロ、6番は三振。 続く3回も下位打線をノーヒットで抑えた。 4回 2巡目の攻撃が始まる。 本田さんだ。 バッターボックスに入ると耕太に 「本当に舐めてるのか?ストレートしか投げて無いよな」 「はい。1、2巡目で、あいつの球は掴めませんよ。」 「大した自身だな」 そして1球目、 カキーン! 金属音が鳴り響く。 ライトの頭上を越えたがボールは右にきれてファールになった。 「これでも、さっきまでの強気でいられるか?」 「はい。まだまだあんなボールでは無いですよ。アイツの球は」 2球目、ファールチップ 3球目、耕太のミットが内角に要求している。 僕は思いっ切り投げ込む。 ズボッ! 「バッターアウト」 耕太は調子に乗って 「ねっ、いい球投げるでしょ先輩」 その言葉に本田さんは悔しがった。 結局ヒットを打たれず5回を投げきった。 僕はベンチの先輩方に向けてお辞儀をして 「ありがとうございました。」 と挨拶をする。 すると監督が 「ナイスピッチング」 と手を叩いて祝福してくれた。 本田さんも後藤さんも拍手をしてくれた。 「最初から5回と聞いていたので、試合だったら、こんなに上手くいきませんでした。」 と言って、お辞儀した。 ここで円満に終わるはずだった。 いきなり近藤がベンチに走り、バットを持ち、バッターボックスに入って 「おい!1球でいいから勝負しろ!」 えっ何で? せっかくいい感じ終わったのに 耕太「勝利、一球だけ投げてやれよ。」 と言って、僕に向かってウィンクをした。 ! そうか、キャンプで知って、何度か耕太に受けてもらったナックルを試すんだな。 と耕太のウィンクで分かった。 バッターボックスの近藤は バットを僕の方に向けて 「お前の最高の球を投げろ!」 と威嚇してくる。 監督が「一球だけだぞ」 耕太が面を被り座った。 ミットはど真ん中を構えている。 よし! 僕は振りかぶり、ミットに目掛けてナックルを投げ込んだ。 ボールはど真ん中 近藤は 「もらった」 と言ってバットを振りだす。 ボールはそこから左右に揺れ始めて、ストンと落ちていく。 近藤のバットは空を切る。 ボールはミットに収まった。 監督「何だあれは?」 と呆然と呟いた。 耕太「ナックルです。 監督、凄いでしょ。 これで甲子園行きましょう」 納得していないのは、バッターボックスの近藤だ。 「お前、ずるいぞ!あんな球を隠しているなんて、聞いて無い。 もう一球だ!」 そこへさっき会った校長がグランドに入って来て 「近藤君、その続きはこの心城学園のグランドで好きなだけやりなさい」 って事は? 校長「3人共、推薦状を学校に送っておきます。 ただし、近藤君と秋山君はチームワークを乱さない事が条件だけどね」 やったー! これで勉強から解放される。 僕の頭には莉乃の顔が浮かんだ。 これから莉乃といっぱい遊べるぞ〜
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