第4章 複雑な想い

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第4章 複雑な想い

日曜日 いつも起きる時間に目が覚めて、布団の中で昨日の事を思い返す。 奈緒ちゃん、可愛いかったな あんなに可愛いくて、性格が良さそうな子が、勝利の事を好きなのに、それでも振り向かず想い続けた女の子って、どんだけ素敵な子なんだろう? と考えてしまう。 (ダメダメ、もう勝利の事は考えないと心で誓ったばかりなのに) するとLINEが届いた。 勝利からだ。 LINEを読むだけなら震えない。 多分、直接会ったり、直接話さなければ、大丈夫なんだと感じている。 ただ、それは果たして二人にとっていい事なのだろうか? いや、絶対に間違っている。 勝利には、あんなに想ってくれる子がいるのに、こんな中途半端な付き合いを引きずっていたら、奈緒ちゃんも可哀想だ。 それに、幸せになる事が出来る勝利も、こんな私が引き止めたら可哀想だ。 ここは、きちんと身を引くべき! 私は自分で気持ちを奮い立たせる。 (勝利、もう連絡しないで下さい。私はもう貴方と話したくありません。) と入力したが、送信ボタンが押せない。 頭では分かっている、分かっているんだけど・・・ 携帯を勉強机に置き、朝食を作りに台所に行く。 父も今日は休みなので、まだ寝ているようだ。 私はお湯を沸かしてコーヒーを淹れて、こんがりと焼けたトーストにマーガリンをつけた。 TVのスイッチを入れて、TVを観ながら朝食を摂った。 TVを観ているが、頭は勝利の事ばかり考えてしまう。 はあ〜 出るのは溜息ばかりだ。 「何だ、朝から溜息ついて。溜息をつく度に幸せが逃げてしまうんだぞ。」 と、根拠も何も無い事を言いながら父が起きてきた。 「ハイハイ、私の幸せはすばしっこくて、捕まえられないんですよ。」 すると父が思い出した様に話し掛けてくる。 「あっ温泉でも行くか?何か横須賀に知る人ぞ知る名湯があるらしいぞ」 「横須賀?」 「うん。インターから近いみたいだから、混雑もしないらしいぞ」 温泉にでも入って、心を休ませたい 「行こう!」 その一言で、今日の予定は決まった。 父も最初から行きたかったのか、朝食も摂らず着替えを始める。 「莉乃も早く支度しろよ。莉乃が支度出来たら行くぞ」 やけに積極的だな? 先週の私の様子を見て心配してるのかな? 私も支度を急いで、私の準備が出来てすぐに出掛けた。 首都高速に乗り湾岸線に出て車を走らせる。そして横浜に入ると横浜港が目に入った。 目の前に橋が見えると 「あ〜海だ〜、あれがベイブリッジよね?」 「最初のがつばさ橋で、次がベイブリッジだよ。 ちょっと寄ってくか?」 「うん」 車はつばさ橋を越えると左にウィンカーを出し、パーキングに入った。 円を描く様に下に降りて行くとパーキングに着いた。 取り敢えずトイレに入り、トイレを出ると父が誰かと携帯で話している。 ? 「パパ誰と話していたの?」 「あ〜小野さんだよ。」 まさか! 「小野さんと何話していたの?」 「小野さんもこっちに向かっているんだって」 えっ 「もしかして、勝利も?」 「いや、勝利君は来ないみたいだよ。小野夫婦と奥さんの友達とその娘が来るみたいだけど」 「その娘?」 「何だか家族同然の付き合いをしている家族みたいだよ」 それって、勝利の幼馴染だ! 今日は勝利の事を考えたくなくて温泉に来たのに・・ 「莉乃、あそこの展望台に行くか?」 「うん」 と頷いて、父の後を歩き、展望台に着いた。 ぼーっとしながら、海を眺める。不思議と心が休まっていく。 海って癒やし効果があるのかな? 何も考えずに眺めているだけで、嫌な気分が和らいでいる様に感じる。 だいぶ嫌な気分が和らいで来た時に、父の携帯に電話が入る。 「あ〜今、展望台で海を眺めているよ」 そんな会話が聞こえると、 「莉乃ちゃ〜ん」 と走って来る圭子さんの姿が目に入ってきた。 圭子さんは、そのまま私に抱きついて来た。 キャンプの時もそうだったが、母のいない私にとって、圭子さんにハグをされると母の温もりを感じるのか心地良い。 今の私にとって、その心地良い温もりで、心に積もった嫌な気持ちを目から涙になって出ていった。 圭子さんも何も聞かず、泣いている私を黙って抱いてくれた。 「お母さん・・・」 勿論母では無いが、自然と口から漏れていた。 泣き終わり、我に帰ると 「圭子さん、ごめんなさい」 「いいのよ、たまには莉乃ちゃんのお母さん役させてね。」 と笑顔で言ってくれた。 さっきまでは誰とも会いたく無い気分だったが、海で浄化された心を、圭子さんの母性愛で埋めてもらい、嘘の様に元気が出た。 「あっそうだ。莉乃ちゃんと同じ歳の子を紹介するね」 と言って、圭子さんが手招きして女の子が近づいて来た。 「初めまして、一条彩香です。よろしくね」 と握手を求めてきた。 髪はロングで眼もくっきりしていて、ちょっと垂れ目で笑顔で出来るえくぼが可愛さを引き立てる。 背は女性にしては少し大きい162、3cmぐらいで、私より少し大きい。 私も手を差し出して、握手をしながら、 「私は結城莉乃(ユウキリノ)です。こちらこそよろしくね、」 と握手した。 すると圭子さんが 「貴方達って、姉妹みたいね。ねえ和子さん」 彩香ちゃんのお母さんだろう人が 「本当ね。でも圭子さんは髪型が一緒だと、皆んな姉妹になっちゃうんだもんね」 と笑顔で言う。 その言葉に皆んなが笑った。 でも、この子が勝利が好きだった子なのか。何だか納得してしまう。 今日はどんな1日になるんだろう?
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