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第5章 遠い甲子園への道のり
「やったー」
莉乃からLINEの返事が届いた。
しばらくは、LINEでのやり取りになりそうだけど、莉乃と離れないで済んだ事が何よりも嬉しかった。
希望が見えてきた。
そうだ心城学園に受かった事を伝えよう。
(まだ伝えていなかったけど、心城学園に野球推薦で入学が決まったよ。)
するとすぐに返信が来た。
(うん。奈緒ちゃんと彩香ちゃんから聞いたよ)
?
あれ?
何で?
すると、またLINEが届く
彩香ちゃんと莉乃のツーショットの画像が送られて来た。
?
すると今度は母から電話が来る
「今日は彩香ちゃんと莉乃ちゃんとご飯食べて帰るから、勝利は勝手に一人で食べてね」
「えっ、何・・・」
といい掛けたが電話を切られた。
温泉へ一緒に行ったんだ。
と分かり、行かなかった事を後悔するのであった。
まあいいか。
莉乃と離れずに済んだのだから
そして月曜日
いつものように3人で学校まで行き、いつものように僕の教室で別れ、いつものように席に座る。
ただいつもと違うのは、横の席に違うクラスの彩香ちゃんがいる事と、コンタクトに変えた筈の奈緒がメガネに戻っている事だった。
奈緒「勝利、遅いよ」
「えっいつもと同じだよ」
奈緒「ねえ、莉乃ちゃんと上手くやってよ。私と勝利が渋谷に行って、鉢合わせしてから、莉乃ちゃんは勝利にも男性恐怖症の症状が出ちゃったのよ。
だから諦めずに治るまで一緒にいてあげてよ!
ねっ彩香」
彩香「うん」
あれ?
彩香ちゃんが不機嫌?
でもそういう事だったんだ。
それで、いきなり電話にも出てくれなかったんだ。
「うん。分かった。絶対に治るまで諦めないよ」
奈緒「そうだよ、莉乃ちゃんには、勝利が必要なんだから
ねっ彩香」
「うん」
やっぱり彩香ちゃんは機嫌が悪そうだ。
奈緒「約束だからね!」
「うん、分かった」
彩香「奈緒は、勝利と話している時が一番生き生きしてるね
ところで、勝利?」
どうしたんだろう?
まだ彩香ちゃんは、不機嫌である。
「何?」
「勝利を必要としてるのは、決して莉乃ちゃんだけでは無い事だけは覚えておいてね」
と言って教室を出て行った。
!
僕はある事に気付いた。
「ねえ、奈緒?」
「な・なに?」
何故か奈緒の顔が真っ赤になっている。
僕は周りに聞こえない様に、小さな声で話し掛ける
「もしかして、彩香ちゃん、ヤキモチ妬いているのかな?」
「えっ」
何故か奈緒はビックリした様子だった。
そして微笑みながら
「良かった、勝利がバカで」
?
そして先生が教室に入って来た。
何だか複雑な気持ちだ。
まったく馬鹿にして!
そして授業が終わり、帰り仕度をしていると、珍しく祐輔がやって来た。
「勝利、ちょっといいか?」
耕太と一緒なら分かるが、一人で来るなんて本当に珍しい。
下駄箱で靴に履き替えて、祐輔が歩く方向について行く。
どうやら目的地は、グラウンドだった。
そして、バックネットの裏側に誘われる。
バックネット裏中心の鉄柱の下を指差し
「ここ」
とだけ言ったので、僕は祐輔が指差している先をみた。
そこには汚い字で
「全国優勝」と書かれていて、更にその下には
「誰にも負けない!」
と書いてある。
「これが俺の夢だ。
中学時代は、俺は勝利に勝って無い。
だから高校で勝負しよう」
?
「中学だって、俺に勝っただろ?」
「それは、実績しか監督が見ていなかったからだ。
6月の練習試合で、近藤を三振に取っただろ?
それも、バットに一度も当てさせずに」
「うん。あれが俺の中学時代の武勇伝だからな」
「俺は近藤を三振させた事が無かった。
あの時の近藤は、大事な局面だったから、力を抜いていない。
それが悔しくて、練習に励んだ。」
「それで6月から無視してたのかよ?」
「別に無視していた訳では無い、勝負していたんだ」
祐輔の勝負は、野球だけでは無く私生活にまで、影響を及ぼしてしまうのか?
それを突き詰めると面倒くさそうだったので、敢えて聞くのを止めた。
「だから、別のチームになる高校で、正々堂々勝負しよう。」
このままでは、また無視されてしまうので、
「でも、勝負はグラウンドだけにしような」
「勿論」
まあ、6月からの祐輔の態度の事も分かったし、良しとしよう。
夏の甲子園予選は東京都では、東西に地区が分かれているので、東京都としては2校出場出来る。
僕達の心城学園は、東地区で祐輔の稲川実業は、西地区となっている。
祐輔が勝負と言っているのは、甲子園という事になるのだろう。
さて、僕達の行く心城学園は、そもそも甲子園を目指せるのかな?
そんな事を考えていた。
「あっこんなとこにいたのか?」
と耕太が僕達の所にやって来た。
「さっき、心城学園の先生から電話があって、今週の日曜日に東京三校との練習試合が、心城学園で13:00からあるので、来て下さい。って連絡があったみたいだよ」
東京三校と言えば、今年の東東京の甲子園代表校で、甲子園でもベスト4に入った強豪校である。
中でも1年生左腕の澤田が、注目されている。
「うん。行こう!」
これは、本当に甲子園を目指せる高校なのか、確かめるには絶好の機会であった。
祐輔「俺も行ってもいいか?
澤田を直に見てみたい。」
こうして3人で試合を観に行く事になった。
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