サマータイム

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「今日どんなもの拾った?」 「ん?今日は硝子が大漁だよ」 空の色をそのまま固めたみたいな青い硝子。メロンソーダの透明さと、小さな泡をたくさん抱え込んだ緑の硝子。色とりどり。熱と夏を吸い込んで閉じ込めて、浜辺で光る。シーグラスはいつ見ても心をときめかせてくれる存在で、そしていつ見てもどこか懐かしい。 私たちは毎年少しずつ変わって、でも硝子の輝きはいつだって同じで眩しいんだ。だから、こんなにノスタルジックな匂いがする。 「今年の夏休みの予定、決まってる?」 ざっざっ、と歩きながら、話しかけた。風の音でよく聞こえなかったのか、予定って?と健二郎が聞き返した。 「…デートの予定とか」 「はあ?」 …そんなに、怪訝な顔しなくてもいいじゃん。聞いてみたかっただけだよ。とはいえ、なんだかひどく馬鹿な質問をしてしまった気がして、顔を反らした。確かに私、なに言ってんだろう。 健二郎は黙ってしまった。私もそれ以上言う言葉が見つからず、黙る。 でもこれで、健二郎にそういう予定がないことだけはわかった。だからよしとした。
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