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「ゼミは持ちたくなかったからいいけど、大学には居たいと」
「その通りです」
こっちも別に、ゼミにも先生にも思い入れはないけど。
ふっと煙を天井に吹いていると外で大きな音が聞こえた。金属がぶつかったような重い音だ。
「また何か飛んで来たんですかね」
「台風ですからね。看板か何かじゃありませんか」
窓の方に這いずって行こうとすると
「窓開けるのはやめてくださいね」
と止められた。
「さっき開けたら、書類が散らかって大変なことになったでしょう。雨は吹き込むし、海が近いから潮臭いし」
しょうがないので、ずってまた戻った。
「退屈なら打ち上げに戻ったらどうですか」
今日は、ゼミ合宿三日目打ち上げの晩で、ゼミ長の私は本来そっちに行くべきだけど。
返事せずに煙草咥えていたら、先生が言った。
「まあ、そっちに行きたくないなら、居てもらっても構いませんが。作業は出来ますから」
「それ、論文ですか?」
「ただの資料をまとめてるだけだから居てもいいって言ってるんです。こんなとこで論文書きません」
1時間前に持って来たビールはもうぬるくなっていた。
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