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「島田先生、煙草ください」  ノートパソコンの脇に置いてあった煙草とライター、投げるかと思ったら先生は手に持って差し出した。  けど、座卓の遠い面に向き合っているので、手を伸ばしても届かない。 「浅川さん、要らないんですか」 「立ち上がるのがちょっと。足痺れました」 「……それは、こっちも同じなんですが」  と、言いながらも先生は立ち上がる。  浴衣であぐらかいてたのが立ち上がったから脛毛見えてる。 「はい。どうぞ」 「どうも」  私は横座りのまま手を伸ばして受け取った。  一本取って火を点けて、片手に煙草とライターを握って振り上げる。 「先生。投げますよ」  煙草とライター、先生の手を外れて後ろの床の間に落ちた。 「……すいません」 「いいえ」  拾うとまた先生はパソコンに向かい、私は缶ビールをもう一本開けた。 「浅川さん。僕の分もとっておいてください」 「大丈夫ですよ。足りなくなったら下行ってもらってくればいいし」 「僕としては、あんまり浅川さんに何度もこの部屋に出入りして欲しくないわけです」 「ゼミ合宿で、担当教諭が女子学生連れ込んだりしたらクビですか」 「指導とかいろいろ言い逃れはあるでしょうけど、他のゼミ生に指されたら終わりです」 「先生、ゼミに思い入れないんじゃないですか?」 「職を失うのは困ります」  言いながら眼鏡直すけど、浴衣に黒縁眼鏡は結構間抜けだ。
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