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何も出来ない身で意識だけが残った。意識が呆然とする中、人形が這いながら扉前でうずくまっている姿が見えた。 獣の如く扉の前で掻き毟る仕草をひとしきりした後、突然、倒れたまま動かなくなった人形を見て、死んだのだと思った。 しかし、暫くすると人形の腹から真っ黒な四足歩行の獣のようなものが生まれた。 まるで、野生の狼の如く涎を垂れ流しながら、唐突に扉を力尽くで当たり破り、どんな獣よりも俊敏に動いたかと思うと、すぐその後ガラスの割れる音が聞こえた。 そこで等々、細身の男の意識はなくなった。 この後暫くし、猟奇殺人事件として暫く世間を騒がせる事となる。 しかし、世間が騒いだ理由は細身の男が死んだ理由からではない。人形を使って子どもをさらう計画書が見つかったからである。 馬鹿げた計画書には、人形をロボット化する等の現実ばなれした内容が特に世間を騒がせた理由でもあった。 そんなニュースを見ながら店主らしき男は"別に人間の命を入れたとは言ってませんけどね"と独り言を呟きながら今日も"ひひひ"と店の外にまで聞こえる笑い声を響かせた。
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