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 男は脈絡もなく歩いているのか、挙動不審気味に立ち止まっては行く先を考える様にしてまた歩き出すを繰り返した。  始めは此方に気付いて警戒しているのかも知れないと思われたが、そうでもない様子で何かを探している事が解った。  街を抜けやがて山間のガードレール付近にやって来ると、突然辺りの様子を伺い始め、ガードレールを乗り越えたかと思うと崖下に飛び降りた。 「何やってんだあの男は、君は此処で待つ様に」  店主らしき男は、動きにくそうな服装をまくり上げると男を追って崖下にゆっくりと降りはじめた。  幸いな事に、崖は下に行くほどなだらかになっており、駆け降りる事が出来るくらいの斜度であった為、男が落ちて怪我をしている心配は無さそうである。 「しかし、何でこんな所に。奥に行ったのか」  背の低い木の枝が掻き分けられた部分が有った。恐らくここを通ったのだと解ると離れすぎるとより追いかけられなくなると思い、少しだけ小走りに後を追いかけた。
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