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 何とか女の子を担ぎ上げ、必死で崖をよじ登った。上まで上がるとガードレールをやっとのおもいで乗り越え上まであがると、道路に寝そべる様にして休憩を取った。 「さ、最悪だ。何でこんな力仕事」  寝そべっていると、ふと顔を覗き込むように影が出来た。見知った顔は勿論、上で待つ様に言っていた女の子である。 「ふ、双子って訳じゃないよな」  そう、息も絶え絶えに気さくに言ってみたが、どうやら女の子はもう話す事も出来ない様でニコリと笑うと、声は出なかったが確かにそう言っている事が解った。 ”アリガトウ”  そう言うと、光の粒子に変わり全身は風に梳ける様にして消えて行った。  おそらく彼女は妖精である。友達の為に逃げ出した後に彼女になりすまし、助けを求める為に此処まで店主らしき男を連れて来たのだろう。  本物の彼女を背負いながら、どう言い訳して病院に連れて行こうかと考えながら一人呟いた。 「ひぃぃぃぃぃぃぃ」  今回は、自分の悲鳴くらいしか出なかった。
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