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「あの、溶けますよ。アイス」  不意に声を掛けられ、自分が目の前の男に見とれていたのだと気が付くと気恥ずかしくなり、何を倒錯しているのだと自分を心でたしなめた。 「どうせならお話でも聞きましょうか、私はこの通り時間も有るんで。お祓いは出来ませんが」 「ありがとうございます。きっと信じては貰えないかもしれませんが」  話を聞くと、毎晩眠りについた後に金縛りにあうとの事だった。真夜中に目が覚めると、何故そうなったのか解らなかったが、自分の枕元にだけ生首が無数に転がってくるらしい。  その後、生首がすべて集まると暴れる様に体に噛みついて離さない。そのまま全身を噛みちぎった後に、咀嚼音が聞こえる程に汚らしい音を響かせた。  朝日が近づくにつれ”けけけけけけ”と言う不気味な笑い声が聞こてくるとようやく金縛りは解け、全身噛み千切られた筈の体は、どういう理屈か解らなかったが元に戻っているとの事だった。 「それは、不眠症になりそうですね」  しれっとそんな事を言う店主らしき男の無神経さに、ほんの少しだけ気が緩むと溶けたアイスを喉に流し込んだ。
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