3/17
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
「ありがとうございました。話を聞いて貰えただけで、ちょっとだけ気が楽になりました」  そう言い、小太りの男は汗が引いたの確認し、外に出ようとしたその瞬間に声を掛けられた。ふと振り返ると小さく手招きをされているのが見えた。 「もし、どうしてもお祓いできなかった時、またお越しください」  耳に当たる息が艶かしく、やはり此処には居てはいけないと、小太りの男は頭を小さく下げてそそくさと店を出て行った。 「さて、”枕”を回収しないと、あの人きっと戻って来そうですね」  店主らしき男は、実に面倒くさそうに本を閉じると”行かなきゃ駄目かぁ”とまるで自分に言い聞かせるかの様に立ち上がった。  いつになくやる気がしないのには訳が有った。未だに、あの枕は好きには慣れない。しかし、使用頻度や使い勝手が良いせいか出ずっぱりの、店一番の人気骨董品でもある。 「戸締り戸締り」  そそくさとシャッターを閉めると、店の中は空家のように何も入っていない様に見えた。それを確認すると、嫌々ながら枕を貸して貰いに行く事になった。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!