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家の中に入った和尚は、家の引き戸を開けたままにしてあった。これは遠まわしに入って来いと言う合図である。
本当に帰って欲しければ、鍵を掛けられ塩をまき続けられる事が常である。どうやら今日は機嫌が良いらしい、頼みごとをするにはいい日に来たと内心、男はほくそ笑んでいた。
「お邪魔します。相変わらず良い雰囲気の家ですね。日本家屋最高って感じの」
男の軽口は家の中に響く、清潔感のある木造建築は100年を優に超える屋敷だったが、手入れも掃除も行き届いており、まるで新築の様に整頓されていた。
「五月蠅いぞ、これ以上騒ぐんやったら帰れや。妻の体に響くやろうが」
「そう言えば、奥さんに挨拶して無かった。少しお邪魔しますね」
「、、、、、、、、、、、」
本当であれば、決して和尚はこの家に誰も入れない。だがこの男を招き入れたのは信頼だけでは無い。男は和尚の秘密を知っており、和尚の本当の姿も知っているからである。
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