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「ほんでなんや?刀やったら返さへんぞ。金はキッチリ払うてるやろこのゼニゲバ化生」 「いえいえ、お金の件ではありません。実は枕お借りしたいんですが」  そう言うと、和尚は少し考えた末に”蔵の方に行く”と言い席を立った。暫くすると和尚は脇にそれを抱え戻ってきた。それは御札がびっしりと巻きつけられた不気味な枕で、机の上に置くとすぐさま交渉に入った。 「コレか、しかし簡単には貸されへんぞ。これも家の先祖代々の品やからな。刀の前はこれに頼りっきりやったからな」 「解ってます。そうですね、取りあえずこれ位で」  そう言い、男は指を三本立てながら三か月分のレンタル料でどうですか?と言うと和尚は少し考えた後、それを見ながら答えた。 「三か月分か、せやったら枕は一週間位しか貸されへんけどでええんか?」 「大丈夫です。恐らく憑き物でも弱いモノですから、あの刀程の力は入りません」  和尚は男に刀を借りていた。それを三か月分で手を打ち、自分の持っていた家宝の一つの枕を貸し出すと言う約束を取り付けたのだった。
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