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「時間をやった覚えはない。売るのか?売らないのか?さっさと答えろ」
「何度も言わせないで下さい。事情を聞かなければ御所望の品は提供できません誰であっても何であっても」
店主らしい男と細身の男の視線はそれる事無く、ただ見つめ合うように相手の真意を探ろうと、互いに腹の探り合いを沈黙と言う形で続けていた。
不意にナイフを横に薙ぎった細身の男は、うずくまった店主らしき男に向かって吐き捨てた。
「明日、明日また来る。今度こそ用意しろ。入れ物は此方で用意する」
細身の男はナイフの血をハンカチで拭うと無表情のまま店を出た。
暫くうずくまっていた店主らしき男だったが、首を押さえながら起き上がると血が滴り落ちた。
どうやら首の皮一枚で済んだ事を確認する。正確に言えば首の皮一枚に加減されただけであり、あの細身の男があえて残したのだとは分かっていた。
吐き捨てた言葉の意味が未だに解らず、明日やって来る男にどう対処をするか悩みながら首の治療を行った。
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